ビザンツ後期の教会建築

「イスタンブールのカーリエ博物館」その1からの続きです。それではさっそく博物館(修道院)の中に入ってみましょう。建物は、ビザンツ様式で建てられた小さなドームを持つ聖室と、後から付け足された2つの部分から成ります。聖室の前に付けられた「内ナルテクス」という前室、そしてその外側を逆L字型に囲む「外ナルテクス」と呼ばれる外廊です。「外ナルテクス」の一番奥には、「パレクレシオン」と呼ばれる礼拝堂があります。全体的にこぢんまりとした教会で、建物だけなら「14世紀の古い建物」という程度で、とくに観光客が来ることはないでしょう。イスタンブールには、このぐらいの古さの建物はけっこうあるのです。しかし、こんなすばらしいモザイク画やフレスコ画が残っているのは、ここだけでしょう。

行かないと後悔! キリスト教モザイクがすばらしいイスタンブールのカーリエ博物館 その2 行かないと後悔! キリスト教モザイクがすばらしいイスタンブールのカーリエ博物館 その2

修道院を寄進したビザンツ帝国の高官

まず、聖室に入る手前の扉の上のモザイク画を見てみましょう。中央に腰かけるイエス・キリストに、大きな丸い帽子を被った人物がこの聖堂を寄進している姿が描かれています。この人物テオドレ・メトキスは14世紀のビザンツ帝国の政治家で、皇帝の信任も厚く、ついには帝国の財務長官にまで出世した人物です。彼は皇帝に継ぐ富を築き、1316年にこのコーラ修道院を増築します。しかしひいきにしてくれた皇帝アンドロニコス2世が1328年に孫との内乱に負けると、彼も失脚。全財産を没収され、このコーラ修道院で修道士として暮らし、1332年に亡くなりました。

内ナルテクスに描かれたイエスとマリアのモザイク画

前室となる内ナルテクスの南北にはドーム屋根があり、その内側にはすばらしいモザイク画があります。南ドーム内側の中心には「全能のキリスト」が描かれ、そこから放射状にキリストの系図として、やや窮屈ですがアダムから始まる24人のイエスの先祖が描かれています。北ドームの方には中心に聖母子が、周囲にはダヴィデに始る12人のユダヤの王たちが描かれています。この内ナルテクスの壁には、聖母マリアの物語のモザイク画も描かれています。ふつうの日本人にはあまり知られていないマリアの生涯。何のエピソードかわかりにくいのですが、マリアの母である聖アンナへの受胎告知に始まり、マリアの誕生、マリアの初めての歩行や、夫となるヨセフに連れられて行く様子などがモザイクで描かれています。幼少のマリアが、ただ大人を小さくしただけの姿というのも面白く感じられます。(その3につづく)