- 元川悦子
- 長野県出身。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。著書に「U−22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)「古沼貞雄 情熱」(学習研究社)ほか。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。W杯は94年大会から4回連続で現地取材した。現在も日本代表ウォッチャーとして世界各国を回っている。
出発エリアをに変更しました。
バッキンガム宮殿。ここを見てからジュビリーラインに乗って、チャールトンに向かうことは可能
ロンドンのプレミアリーグ所属クラブを順番に紹介してきたイングランド編。今回はチャンピオンシップ(2部に相当)で戦うチャールトン・アスレレィック(Charlton Athletic)FCを取り上げることにする。
このチャールトンは私自身にとって思い出深いチーム。日韓ワールドカップ直後の2002年夏、元日本代表の三都主アレサンドロ(現浦和)が練習参加した際、取材したことがあるからだ。普段はメディアでも入れない整備された練習場を訪ね、95−96シーズンから11年間も指揮を執ったアラン・カービシュリー監督が三都主を「いい選手だ」とコメントしているのも実際に聞いた(もちろん、ネイティブイングリッシュが全て理解できたわけではありませんが…)。残念ながら、彼は労働ビザを取得できずにチャールトン移籍が叶わなかったが、我々日本人メディアがイングランドのサッカー環境の素晴らしさを目の当たりにするいい機会になったのだ。
ウエストミンスター寺院。バッキンガム宮殿に近い
そんなチャールトンのクラブ概要を簡単に説明すると、創設は1905年。獲得タイトルは1947年のFAカップのみ。長年、プレミアリーグとチャンピオンシップを行ったり来たりしている典型的な「エレベータークラブ」だった。それでも三都主を高評価したカービシュリー監督が率いていた間にはチーム力が飛躍的にアップ。00−01シーズンが9位、03−04シーズンが7位とビッグ4に迫る勢いを見せたことがあった。
今季は降格によってオランダ代表FWハッセルバインクやデンマーク代表MFロンメダールやタレントが去ったものの、中国代表MF鄭智など興味深い選手がプレーしている。は2月中旬時点でチャンピオンシップ5位。3位以内に入ればプレミアリーグ復帰も可能なだけに、終盤戦の追い上げを見せたいところ。ここから先はプレミアリーグの優勝争いよりも、チャンピオンシップの上位争いの方が熾烈かもしれない。
チャールトンに近いグリニッジはテムズ川にも近接している
彼らの本拠地は「ザ・ヴァレー(The Valley)」。地下鉄・ジュビリーラインのノースグリニッジ(North Greenwich)駅からバスで15分程度のところにある。このジュビリーラインだが、グリーンパーク(Green Park)駅やウエストミンスター(Westminster)駅などロンドンの主要部を通る。デイトラベルカードを買っておけば、スタジアムへ行く前に、最大の観光名所であるバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)やウエストミンスター寺院(Westminster Abbey)などに立ち寄ることも可能なのだ。さらにはテムズ川や「世界標準時」で名高いグリニッジ天文台のあるグリニッジ・パークも遠くない。このあたりを巡ってからフットボール観戦というのも一つの手だろう。
チャールトンの練習場。普段は一般公開されないが、三都主アレサンドロが練習参加した時に中を見ることができた
ザ・ヴァレーに話を戻すと、収容人員は2万6500人。長い間、ロンドン最大のスタジアムとして知られていた。歴史は1919年に遡る。当時、安定した本拠地を持てなかったこのクラブは廃坑にスタジアムを建設しようと目論んだが、資金難で費用捻出ができなかった。そこでクラブサポーターたちが立ち上がった。彼らは廃坑を埋め、余った土砂を周囲に積み上げてスタンドにした。この「ザ・ヴァレー」の名前の由来は、スタジアム建設前の廃坑が峡谷のように見えたことだという。そんな歴史がイングランドらしいところだ。その後、再び財政難に見舞われたクラブはスタジアムを手放す事態に直面したが、1992年にはザ・ヴァレーに復帰。サポーターは今もこのスタジアムを誇りに感じている。
チャールトンのホームスタジアム「ザ・ヴァレー」
そんなクラブだけにチャンピオンシップに降格した今も熱狂的な人気を誇る。チケット購入はプレミアリーグ時代より多少は難易度が下がったようだが、クラブ会員優先というのは変わらない。我々一見さんはいつものようにクラブ公式HP(http://www.cafc.co.uk/)を見て、地道に情報を収集するしかないだろう。
運よくチャールトンのホームゲームチケットを入手できた場合、気をつけなければいけないのは、周囲の環境だ。ザ・ヴァレーは工場街に隣接する。こういう場所は犯罪の温床になりがち。夜遅くに1人で異国人が歩いていたらどんな目に遭うか分からない。「試合が終わってからのんびりと周囲の写真を撮ろう」などと日本人的感覚でいては危険である。試合終了後は他のサポーターと歩調を合わせて早く帰ること。それを肝に銘じたうえで、プレミアとは一味違ったフットボール観戦を楽しみたい。
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2008/02/29)
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