市場内の寿司屋は、デンマーク人による経営!!

「ビリングスゲート・マーケット」訪問記前編からの続きです。私は事前にアポイントを取っていたため、当日はマーケット内を市場関係者に案内していただきました。初めにビリングスゲート・マーケット全体の説明を聞いた後、白衣を着て一緒に場内を隈なく周ります。最初に訪問した建物の厨房施設では、プロの魚屋さんから主婦まで幅広く魚介類の調理方法などを教えていました。ここでは寿司講座も人気だそうですが、残念なことに講師は日本人ではなく、市場内で寿司屋を経営するデンマーク人女性でした。その寿司屋の名前も中国語風で、日本人としては複雑な気分でした。この建物内にはそのほかにもレクチャー室や会議室もあり、来客との商談などに使われています。日本の水産業界関係者も少なくないとか。

厨房施設では魚介類を使った料理を教えている 厨房施設では魚介類を使った料理を教えている

食のプロからも信頼される、魚のプロたち

さて、いよいよマーケット内を見学です。水産物関係の取り扱いでは、ビリングスゲート・マーケットはイギリス随一の品揃えを誇っています。2017年9月現在、店舗が30、スタンドが98あるそうです。これらは築地流に言うと、仲卸業者というところでしょうか。築地と同様にビリングスゲート・マーケットも基本的には卸売市場ですが、今では小売りもしています。とはいえメインのお客さんはやはり魚屋さん、レストラン、ホテル、カフェ経営者などプロの人たちです。マーケットでは、ひとたび注文されれば、たとえ一匹の魚であっても一日以内に仕入れるそうです。プロの人たちから厚く信頼されている様は築地と同じで、目利き力や人間性が売りです。そういう意味では、ビリングスゲートのあんちゃんたちも、イキでいなせな人たちです。てきぱきと働く姿も重なります。

プロに指示される豊富な品揃え プロに指示される豊富な品揃え

ロンドンの日本食レストランで、美味しいうな丼が食べられるワケ

私が訪問した日に扱われていた魚貝類の多くはサケ、カツオ、ヒラメ、タイの仲間、ニシン、エビ、カニなど、日本でお馴染みのものでした。日本では近年、高価格なため庶民の口に入りにくいウナギでさえも扱われていました。市場関係者が引き出しを開けると、そこにはウナギがたくさんいて、ロンドンでも美味しいうな丼をいただけそうです。それはさておき、関係者によれば、ここで扱っているのは「銀ウナギ」という種類で、北アイルランドやオランダ産の養殖ウナギです。日本には輸出していませんが、一部はイギリス国内の日本食レストランに卸すそうです。またここでは、イギリス国内の寿司店向けに、アナゴ(Conger eel)を燻製に加工しています。

引き出しを開けるとうなぎが!! 引き出しを開けるとうなぎが!!

ベッカムも愛する名物料理「ウナギのゼリー寄せ」

ウナギというと、日本人にとっては馴染みの食材ですが、イギリスでも19世紀半ば頃から一部で盛んに食べられていました。代表的な「ウナギのゼリー寄せ」は、ウナギをレモンや酢、ハーブなどと一緒に煮込むシンプルな料理です。「ゼリー寄せ」とはいうものの、実はこれはウナギの煮凝りです。現在はイギリスの若者には好まれませんが、かつて労働者が多く暮らしたロンドン東部の名物料理です。また、サッカー元イングランド代表のデビッド・ベッカムさんの好物としても知られ、今でも食文化を守りたい一部の人は好んで食べています。かば焼きが定番な日本人にとっては「ウナギのゼリー寄せ」と聞くとゾッとするかもしれませんが、地域の伝統料理として、今でも「Fクック (F Cooke)」など市内にまだ食べられる有名店が数軒残っています。チャレンジ精神がある方は、ロンドンに行ったら是非挑戦してみてください!(後編に続く)

ゼリー寄せに調理されるウナギ ゼリー寄せに調理されるウナギ