世界でただ一人とされる、女性の塔守

観光地・名所の現地ガイド記事

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世界でただ一人とされる、女性の塔守

掲載日:2015/09/23 テーマ:観光地・名所 ライター:沖島博美

タグ: 一度は見たい 夏にオススメ 街歩き 建築 春にオススメ 素晴らしい 美しい



ABガイド:沖島博美

【ドイツのABガイド】 沖島博美
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東京在住。 旅行作家。ドイツの民俗、歴史、文化などを取材し、書籍や雑誌で紹介し続けている。主な著書に『グリム童話で旅するドイツ・メルヘン街道』(ダイアモンド社)、『北ドイツ=海の街の物語』(東京書籍)、『ベルリン/ドレスデン』(日経BP),『ドイツ〜チェコ古城街道』(新潮社)、『ドイツ・クリスマスマーケット案内』(河出書房新社)など他多数。日本旅行作家協会会員。

青の塔から眺めるバート・ヴィムプフェンの町 青の塔から眺めるバート・ヴィムプフェンの町

赤い屋根が美しいネッカー河畔の古都

ここはドイツ古城街道のハイライトのひとつ、ネッカー河畔の古都バート・ヴィンプフェンBad Wimpfen。中世には神聖ローマ皇帝が滞在する城があり、皇帝都市として栄えた。近世になると交通の不便さから近代化の波に乗れず、それが幸いしてこのように美しい町並みが残された。今ではドイツ古城街道の中でもとりわけ人気の高い町で、シーズンを問わず観光客が訪れている。皇帝の城は風雨にさらされて廃墟のようになってしまったが、礼拝堂のアーチや、危険が迫った時に皇帝が隠れる場所だった「赤の塔」など、一部は修復保存されている。この町の魅力はみごとな木組みの家並みだ。細い路地裏にも可愛らしい木組みの家が建ち並んでいる。小さな町なので行ったり来たり、あちらこちら散歩しても半日あれば観光できる。

 

ピアノの前でインタヴューに答えるブランカ・クノーデルさん ピアノの前でインタヴューに答えるブランカ・クノーデルさん

今でも人が住んでいる青の塔

一際高い「青の塔」は町の見張り塔だった。最初に建てられたのは1200年頃である。その当時は皇帝が逃げ込む最後の砦でもあった。何度か雷が落ちて火災が発生し、修復する度に形が変わっていった。現在の形になったのは1851年のことで、それまでは地上からの入り口は無かった。敵が攻めてきた時に登れないよう入口は2階にあり、梯子で登り降りしていた。1851年に初めて地上から入れるようになった。塔は32mの高さがあり、その上に鐘楼が、さらに風向計が付いているので先端まで含めると60m近くなる。町で最も高い塔であるため、14世紀から見張り塔の役目を果たしていた。そして30年戦争(1618〜1648年)以降、青の塔には塔守が住むようになった。町の記録によると、これまでに32人の塔守が住んでいる。

 

一般家庭と変わらない快適な暮らし 一般家庭と変わらない快適な暮らし

塔での生活を決意して子どもたちと塔へ

その32代目の塔守が現在のブランカ・クノーデルさん。初めての女性塔守だ。1996年からここに住み、塔守になっている。塔の階段を上がっていくと通行料と書かれた窓口があり、クノーデルさんが出てくる。ここで見晴らし台に出る料金1.50ユーロを払う。塔守という存在が珍しい今日、塔に住んでいることも非常に珍しい。まして女性となるとさらに珍しい。クノーデルさんは3人の子供がまだ小さかった頃に夫を亡くし、経済的に苦しんでいた。その時に前任者の塔守から後を継がないか、と勧められる。塔守は公的な仕事であるし、ここに住めば家賃も必要ない。クノーデルさんは祖父が塔守をやっていたために親しみがあり、仕事を受け継いだ。3人の子供たちと共に塔の上で生活を始める。

 

鐘の代わりにラッパを吹いて少年たちが時を告げている 鐘の代わりにラッパを吹いて少年たちが時を告げている

かつては鐘を鳴らすのも塔守の役目だった

塔で暮らすなど想像できないことだが、なんと塔の中は53m2と驚くほど広い。西側部分に階段があるので住居はコの字型。ぐるっと周るような感じでリビングや台所、トイレとシャワー室、寝室が並んでいる。子供たちが大人になって独立したためリビングを広くした。可愛らしく飾りたてたリビングにはピアノまである。ここが空中であるとは信じがたい。地上からの階段は134段。以前はさらに33段登って12時と19時に釣鐘の綱を引いて時を告げていた。今はその習慣はなく、夏場の毎日曜12時に、少年も交えた塔のラッパ吹きディ・トゥルムブレーザーDie Turmblaserがバルコニーからトランペットを吹いて時を告げている。伝統を重んじるドイツでは他の古い町でも夜警の姿を時々目にする。塔守も何人かはいるが女性はドイツでただ一人。おそらく世界でただ一人、と言われている。

 

外壁を補強中の青の塔 外壁を補強中の青の塔

データ

青の塔
Der Blaue Turm

住所:Burgviertel 9, 74206 Bad Wimpfen
入塔料:1.50ユーロ
開塔時間:毎日10.00 -18.00 11月から3月は天候により時間を変更
Trumblaeser : イースターから10月半ばまでの毎日曜日12時より
クリスマスマーケット開催中は土曜の19時と日曜の12時

 
 

※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2015/09/23)
※渡航前に必ず現地の安全情報をご確認下さい。http://www.anzen.mofa.go.jp/
※この記事はガイドレポーターの取材によって提供された主観に基づくものであり、記事は取材時時点の情報です。
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