偶然に聴く音楽も、旅の思い出となる

旅の感動はいろいろなところに潜んでいて、私たちを驚かせます。その1つに、外を歩いていてふと耳にする音楽があります。旅の途中、流れてきた曲に個人的な思いが加わって感動の嵐となった、なんて経験はありませんか? 携帯型音楽プレイヤーなどで能動的に聴くのとは違い、ふいをつかれるというのがポイントです。今回はそんな、旅とBGMの関係について考えたいと思います。

地元のバンドの曲をデパートで聴く

まず1つのシチュエーションとして挙げられるのが、「その土地ゆかりの曲が流れてくる」というパターンです。これはけっこうよくあることではないでしょうか。たとえばアメリカのシカゴ。この地ゆかりのミュージシャンは多いですが、私が大好きなバンド、ウィルコもここを本拠地としてきました。シカゴの通りを歩きながら、私の目にはウィルコの街として風景が映っていましたが、高級デパートの靴売り場にいたとき、ふいに彼らの曲がかかったのです。「こんなところでかかるとは」と少し意外でしたが、さすが地元だと思いました。こうして外で流れているのを聴くのは初めてです。「ここにいる人たちは、きっとみんなこの曲を知っているんだろう」などと妄想し、ニヤニヤしながらひとり感動に浸りました。

ウィルコのアルバム・ジャケットの写真に使われた、シカゴのマリーナシティのツインタワー ウィルコのアルバム・ジャケットの写真に使われた、シカゴのマリーナシティのツインタワー

ご当地ソングを突然、耳にする喜び

またボストンに行ったときのこと。ドーナツ店のカウンターに座っていたら、オーガスターナの「Boston」が流れてきました。歌詞とメロディがせつない、名曲ですね。曲がヒットしてから何年も経っていましたから、そのタイミングでかかった偶然も感動に拍車をかけました。忘れていた記憶がよみがえり、そうだ、ここはこの曲の舞台じゃないかと思い出したのです。本物の町で、私はこれを聴いているのだ…、そう思うと旅行に来た喜びと共に、音楽が心にしみて涙が出そうになりました。まわりを見ると、お客さんも店員さんも、誰も曲など気にとめていないようでしたが。

偶然流れてきた曲“Boston”に感動した、ボストンの町 偶然流れてきた曲“Boston”に感動した、ボストンの町

台湾の旅でJ-popを知る

「海外で日本の曲が聴こえてきてハッとする」、そんなシチュエーションもありますね。台湾でのこと。最近はK-popが主流になっているようですが、少し前までは台湾ではJ-popが大人気で、お店に入ると流れてくるのは日本語の曲ばかりでした。私は邦楽をほとんど聴かないので、台湾を旅行中は日本にいるときより邦楽を聴いたと思います。「こんな曲があるのか」「こんな人がいるのか」などと、台湾で日本の情報を得るのは不思議で楽しいものでした。台湾のラジオDJが中国語で話す合間に、ときおり日本語を混ぜたりするのも、日本でDJが英語を混ぜるのと似ていておもしろかったです。(後編へつづく)