ウィーンの宝だったクリムトの名画

オーストリア、ウィーンにあるベルヴェデーレ宮殿の内部は美術館になっています。特にクリムトの『接吻』という作品で有名です。かつては、『接吻』と並ぶ名画もあったのですが、今はありません。その絵画は『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』です。別名『黄金のアデーレ』いう金箔をふんだんに使ったクリムトらしい艶やかな作品で、『接吻』と同時に見ると溜息がでる美しさでした。ところが今は、この作品はアメリカにあります。

映画にもなったクリムトの名画、アデーレの肖像画は、今どこに? 映画にもなったクリムトの名画、アデーレの肖像画は、今どこに?

映画にもなった『黄金のアデーレ』をめぐる裁判

第二次世界大戦のときにアメリカに逃れたウィーン出身の女性が、オーストリア政府を相手に『黄金のアデーレ』の所有権を主張しました。このあたりのいきさつは映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』に描かれています。ただし、オーストリア側からすると、ずいぶん美化したストーリーのため、様々な意見があるようです。作品の所有権を主張し、オーストリア政府からそれを勝ち取った女性は『黄金のアデーレ』のモデルの姪御さんにあたります。

海を渡ったアデーレは、今どこに?

『黄金のアデーレ』は、2006年にオーストリア政府から、アメリカ在住のアデーレの姪御さんに引き渡されました。私はそのころウィーンに住んでいたのですが、ウィーン中に「さようならアデーレ」というポスターが貼ってありました。ベルヴェデーレ宮殿にあるクリムトの展示室に行きましたが、すでにその作品はありませんでした。係員に聞くと、まだ『アデーレ』はここにあるが、アメリカに送るため梱包して地下の保管室に仕舞ってあるとのことでした。

ニューヨークのノイエギャラリーに

現在、『黄金のアデーレ』はニューヨークのノイエギャラリーにあります。ここは、化粧品会社のエスティ・ローダーの子息であるロナルド・ローダーが所有する美術館です。彼は、アメリカに渡った『黄金のアデーレ』を1億3500万ドルで買いました。映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』では、ローダーの購入額のことは、これっぽっちもでてきませんでしたので、オーストリア側が快く思わないのもわかります。私はノイエギャラリーの狭いスペースに掛けられている『黄金のアデーレ』を見ましたが、アデーレはどう思っているのかと、考えてしまいました。