戦前のアメリカの好景気を象徴するビル

「NYの摩天楼の中でも美しさが光る、クライスラービルディング」前編からの続きです。高さでは「世界第2位」になってしまったクライスラービルディングですが、その後「2位」の地位を、なんと38年間にわたって維持しました。というのも、クライスラービルディングの建設中の1929年10月、世界恐慌が始まってしまったからです。クライスラービルディングやエンパイヤステートビルは、1920年代の好景気の中で建設が企画されたので、中止にはならなかったのですが、大不況が始まると、ビルの建設ラッシュは沈静化しました。完成しても、中に入るテナントがなかったからです。恐慌後に完成したエンパイヤステートビルは、完成時にはテナントが少なくてガラガラだったと言います。

ビルはグランドセントラル駅近く、東42丁目通りに面している ビルはグランドセントラル駅近く、東42丁目通りに面している

ビルは会社ではなく、個人の持ち物だった

クライスラービルディングの建設費は、クライスラー社ではなく、すべて創業者のウォルター・クライスラーの個人資産でまかないました。ここにクライスラーの本社があったのは1950年代までで、以降は持ち主も次々と変わっていきます。クライスラー社も1970年代以降は経営不振になっていきます。現在はUAE(アラブ首長国連邦)のファンドが、所有権の多くを持っているとか。

「アールデコ建築」とは?

さて、このビルは、当時の流行である「アールデコ建築」で建てられています。1910〜1930年代に建てられたアメリカの高層建築はだいたいこの影響下にあり、マンハッタンにあるロックフェラーセンターやエンパイヤステートビルもこのアールデコ建築です。直線と曲線を組み合わせた幾何学的な装飾が特徴で、建築以外にもカッサンドルなどのポスター画、ルネ・ラリックの工芸品なども、アールデコ作品です。日本では高層ビルではありませんが、東京の聖路加病院、庭園美術館などが有名な建築物です。

1階ロビーの装飾を見学してみよう

自動車メーカーの本社ビルとして建てられたため、このビルの随所に自動車をモチーフとした装飾や、アールデコ装飾があるのですが、残念ながらこのビルには展望台もなく、オフィスビルなのでテナント関係者以外の立ち入りができません。それでも、1階のロビーエリアのみ(平日8:00〜18:00)一般人でも見学できます。寄木細工のようにはめ込まれたエレベーターのドアの装飾や郵便受け、天井の絵画は見応えがあります。

遠くからだけでなく、近くからも見てみよう

いかがでしたか? 今回は、ニューヨークを代表するビルのクライスラービルディングを紹介しました。中には入れませんが、外からまず眺め、そして時間があったらロビーまで行ってみてください。ビルを写真に納める場合は、印象的な尖塔部分を入れたいので、少し引いた場所から狙うといいでしょう。最寄り駅は、地下鉄の「42丁目- グランドセントラル駅」で、下車後、徒歩3分ぐらいで着きます。それでは!