元々は漁に使う船として作られたカヤック

カヤックの起源には諸説ありますが、太平洋北部に住む先住民であるアリュート族が作った、漁で使うための小型で機動性の高い船がオリジナルと言われています。流木や動物の骨をフレームにして、アザラシの皮を張り付けたその小型ボートは、現在のフォールディング・カヤック(組み立て式のカヤック)と構造はほとんど同じです。驚くべきはその歴史。カヤックの原型とされるアリュートの船が登場したのは、なんと今から約9000年前と言われています。つまり日本でいえば縄文時代から基本的な構造が変わっていないのです。

初心者でもOK、氷塊がただようアラスカの海でシーカヤックを楽しむ 初心者でもOK、氷塊がただようアラスカの海でシーカヤックを楽しむ

初心者でも楽しめるマリンスポーツ

現在海で使われるシーカヤックは、グラスファイバーや強化プラスチックの素材で船体が作られたものが主流。浅瀬でも進むことができ、浜辺から直接海に漕ぎ出すことができます。操作も意外に簡単で、初めて乗る人でも基本的な動かし方とパドルの操作方法の講習を受ければ、静かな海ならすぐに漕ぎ出すことが可能です。日本国内にもたくさんのシーカヤックが楽しめるところがありますが、ここでは世界でも珍しい、氷が漂う海を進むアメリカ、アラスカ州でのシーカヤック体験を紹介しましょう。

氷河に簡単にアクセスできるアラスカ

海に直接氷河が流れ込む場所は世界中に何か所もありますが、ほとんどの場所が人の住む場所から遥か離れた辺境ばかり。唯一の例外がアラスカで、州内には町から簡単にアクセスできる氷河がたくさんあり、同様に港から船で30分も行けば、巨大な氷河が海に流れ込む様子を目にすることできる場所もあります。町から直接カヤックで接近できるところもありますし、スワードという町からは、クルーズボートにカヤックを載せて氷河の近くまで行き、そこからカヤックに乗り換えて氷河の海を漕行することができます。漕ぐ距離も短いので初心者向きといえるでしょう。

静かな海で大いなる自然と戯れる

カヤックに乗ってみるとわかりますが、見た目以上に安定していて、ちょっとやそっとのことでは転覆しないことが感じられます。もちろんライフジャケットをつけるのは当然ですが、冷たい海に放り出されたらどうしよう……、という心配はありません。また海が荒れているときはツアーは催行されないし、ガイドが危険のない氷河との距離を把握しているので、安全性はとても高いと言えるでしょう。時折遠くで氷河の崩れ落ちる音が聞こえる以外、鳥の鳴き声くらいしか聞こえてこない静かな海。漂う氷の上でアザラシが昼寝をしている姿や、運が良ければクジラを見かけることもあります。氷河が流れ込む海の空気は冷たいですが、その寒さを忘れてしまうほど、心地いい自然との一体感を感じることができます。