動物が大好きな娘の、初めてのホームステイ

高校生の娘がオーストラリアのご家庭にホームステイに行ってしまってから、私は「しまった!あの注意を言い忘れた」と悔やみました。娘は無類の生き物好き。犬や猫といったペットにとどまらず、生きているものなら、蛇や蜘蛛でも、なんでもかわいいと言って触りたがるのです。やさしい心を持っているのはいいけれど、親としては気が気ではありません。「『動物、とくに野生動物には、気安く手を出したらだめよ』と、厳しく注意するのを言い忘れた……。」海外旅行に行くと見るものすべてがめずらしくて、リスでも野良犬でもふらふら近づいていってしまう娘には、昔から手を焼いていました。これまでの旅行先では、狂犬病などの危険があるからいくらかわいくても見るだけにしようと言い聞かせても、動物の愛らしさに負けてこっそり触ったりしていたようです。

いくら動物好きでもわきまえて!野生動物は危険がいっぱい いくら動物好きでもわきまえて!野生動物は危険がいっぱい

動物に好かれる才能は危険と紙一重!

今回もきっとなにか触っているだろうと思って聞いてみると、「うん。道端で、カンガルーに触った。」案の定の答えでした。そのいきさつを聞き、写真を見せてもらいました。それによると、ホストファミリーの車で郊外へ出かけるとき、森の中の道でカンガルー数頭に会いました。そのうちの小さい一頭がひょこひょこ近づいてきたので、娘は車から降りてじっくり時間をかけて距離を詰めていき、手を伸ばしてみると、小さいカンガルーは娘の手のにおいを嗅いでさらに寄ってきたそうです。顔を近づけ合い、鼻と鼻とをくっつけ合って挨拶(犬がよくやりますね)。そして犬によくやるように、首根っこを掻いてやると、カンガルーは気持ちよさそうに娘の手に体重を預けてきた……ということでした。あっという間にここまで手なずけられるのはたしかにすごいとは思いますが、そのカンガルーのアップの写真に写っている前足の鋭い爪を見てぞっとしました。カンガルーに敵意がなくても、万が一、何かの拍子に驚いて、うっかりこの爪で娘を引っ掻いてしまったら?カンガルーを触った手でうっかり目をこすったり、傷口に触れたりしたら?なにもなかったのが幸運でした。

うっかり触って自分に感染したら一大事。

オーストラリアのカンガルーの場合、狂犬病はなく、エキノコックス症(寄生虫によって引き起こされる感染症)の心配もないようです。しかし、野生動物は泥水を飲んだり寄生虫だらけの生き物を餌にして食べたりしているのですから、そもそも体の造りが人間とはちがいます。近づいて素手で触るなどもってのほかなのです。私も生き物が好きなので、何を見ても「かわいい!」と思ってしまうのはとてもよくわかるのですが、旅先で自分の身を守るために、心を鬼にして娘を叱りました。しかし、私も若いころ、インドの野良牛やヤギなどを触っては手も洗わずに食事をしていました。無知とはおそろしいものです。生き物が好きな旅行者は、安易に手を出さないよう、くれぐれも注意しましょうね。