成長と崩壊を繰り返す生きている氷河

地球温暖化の影響で、世界中の氷河が後退しているといわれていますが、パタゴニアには今でもその規模を変えることのない氷河が存在しています。それがアルゼンチンのロス・グラシアレス国立公園にある47の氷河のひとつである、ペリト・モレノ氷河です。首都ブエノスアイレスから南へ約2000km、そこはパタゴニアのまっただなか。この氷河の長さは30km。現在でも成長を続けながら、その先端が崩壊し続けているので、その大きさが変わることがないのです。それで「生きている氷河」と呼ばれているのですが、いったいなぜこの氷河は生き続けることができているのでしょうか。

生きているペリト・モレノ氷河の神秘的な美しさ 生きているペリト・モレノ氷河の神秘的な美しさ

ペリト・モレノ氷河が生き続けられるメカニズム

ペリト・モレノ氷河は湖に接する先端部分が前進していきます。湖に突き出ていく氷河の先端は幅5kmにわたり、その左右で湖を2分します。そうすると水の流れ出る先がなくなってしまうので、やがて湖の水位が30mほど上昇し、その圧力で湖を堰き止めている氷河が破壊されてしまうのです。氷河は1日あたり2m前進しますが、破壊されて崩壊する部分も同じだけあるので、氷河の規模は一定に保たれることになります。これがペリト・モレノ氷河が今も生き続けられるメカニズムです。

大崩落は生きている氷河の営み

このようなメカニズムによって、氷河の先端部分は湖の水圧で破壊されますが、それは大崩落となって私たちの目の前に現れてきます。湖にはこの大崩落を見物するための遊覧船が運航されていますが、大崩落の瞬間は、巨大な音とともに高さ70mの氷河が崩れ落ちていくのです。それはまさに大いなる自然の営みに他なりません。ただし、この大崩落は自然の営みなので、いつ起こるかは誰にも予想が付きません。ペリト・モレノ氷河は神秘的な青い色を帯びています。これは氷自体の重さで氷河が圧縮されて高密度になり、青い色を反射するためだといわれていますが、人間の予想を超えたメカニズムと神秘的な美しさをもつ氷河なのですね。