世界遺産の銀の山

南米アンデス山脈のただ中、ボリビアの首都ラパスの440m南東に、ポトシという町があります。標高約4000mという世界最高所にあるこの都市には、17万人ほどが暮らしています、世界史の授業でその名前を習った人も多いと思いますが、ここはかつて銀の採掘で知られた場所。その鉱山セロ・リコは、町の南にどっしりと腰をすえ、極度に乾燥して1本も木が生えていない山肌をさらしつつ、ポトシの町を見下ろしています。

ヘルメットをかぶり、ダイナマイトを手にボリビアのポトシ鉱山へ ヘルメットをかぶり、ダイナマイトを手にボリビアのポトシ鉱山へ

発展と衰退……ポトシの歴史

この場所で豊富な鉱物資源が発見されたのは、スペイン統治時代の1545年でした。以降人口が増え、一時は20万人を越えるという南米有数の規模の大きな町となりました。スペインは先住民を使役して多大な利益をあげ、ここから膨大な量の銀がスペインに運ばれました。大規模な採掘によって、セロ・リコの山の高さは採掘が始まる前に比べて、なんと数百メートルも低くなってしまったそうです。1800年以降に銀が枯渇すると、主要な鉱物は錫に変わり、以前ほどの利益もあがらず経済は衰退しました。それでも採掘は現在にいたるまで続けられています。

ツアーに参加して坑内へ

セロ・リコの採掘現場はツアーで見学することが可能です。作業着と長靴、ヘッドライト付きヘルメットを身に着け、鉱夫へのみやげを購入します。彼らが喜ぶみやげはダイナマイトやコカの葉、ジュースなど。準備が整うと、いよいよ坑内にもぐりこみます。坑道は曲がりくねってどこまでも続き、時には非常にせまくなります。長いはしごを上り下りしたり、ロープで吊るされて何メートルも下りなくてはならなかったりと、かなりハード。時おり岩の表面できらきらと光るものを見かけます。何かの鉱物なのでしょう。

過酷な労働に従事する人々

坑内では、手掘りで作業する労働者を見かけます。真っ暗で空気が悪く、音もないこの鉱山内で、彼らは交代しながら1日に8時間働くとのこと。仕事中は何も食べず、コカの葉を噛んで空腹やストレスを和らげます。過酷な労働環境のため、スペイン統治時代には、事故や粉塵による肺疾患、銀の加工に使われる水銀汚染などによって、ここで800万人が亡くなったと推定されています。現在でも、ここで働く坑夫の平均寿命はわずか40歳なのだそうです。ポトシを訪れると、働くという行為は一体何なのか、そしてどうあるべきなのか、考えずにはいられない自分を発見することでしょう。