キューバで有名人に遭遇?

みなさんは、旅の途中で誰か有名人に遭遇したことはありますか? 今日は私が遭遇したある有名人のお話をしましょう。2015年の4月、私はキューバ第2の都市でありキューバ革命ゆかりの地でもあるサンティアゴ・デ・クーバにいました。その日、街の中心に位置するセスペデス公園に行くと、なんだか人だかりができていました。人々はみな歓喜の表情を浮かべ、興奮しつつ一人の中年男性を囲んでいます。『誰だろう。カチッとしたいでたちだし、芸能人?それとも政治家だろうか…』。

人々の歓声に応える“5人の英雄たち”のひとり、A.ゲレーロ氏 人々の歓声に応える“5人の英雄たち”のひとり、A.ゲレーロ氏

教えてもらってわかった“5 heroes”

その人は人々の熱狂に応えるべく、求められるままにみんなと喋ったり写真に映ったりしています。いったい誰なのかと周りの人に尋ねてみると、「シンコXXX!」「シンコXXX!」と教えてくれますが、“シンコ(=数字の5)”しか聞き取れません。しばらくするとその男性はお付きの人たちと一緒に去っていきました。宿に戻ってオーナーに聞いてみると、「彼に会ったの!? それは超ラッキーよ。彼は“5 XXX”のひとりで、今サンティアゴ・デ・クーバに滞在しているのよ!!」と言い、紙に“5 heroes”と書いてくれました。

スペイ容疑で逮捕されたキューバ人たち

『“5人のヒーロー”か!!』。スペイン語だとヒーローズの発音が“エロエス”なので全然わかりませんでした。1996年、マイアミで、外交官や大学教授といった5人の知識人がスパイ容疑で逮捕されました。彼らは、反キューバ政府を掲げる過激派グループによるキューバへのテロ行為を防ぐために、グループの活動の場であるマイアミで情報収集を行っていたのでした。アメリカでの裁判では具体的な証拠がないまま実刑判決を受け、キューバでは彼らを“5人の英雄たち”と呼んで支持し、キューバ政府は対米戦略の中心として、彼らの解放運動を展開してきました。

キューバの歴史を体感できた

5人は2011年から2014年にかけて解放され、2015年の2月にはフィデル・カストロ前議長とハバナで会談しました。私がサンティアゴ・デ・クーバで見たのは、アントニオ・ゲレーロという、終身刑の判決を受けた詩人でした。その場では彼が誰なのかわかりませんでしたが、帰国後に調べてみて、市民があれほど熱狂して彼を迎えていた理由がわかりました。逮捕前の写真に比べてすっかり老けてしまったゲレーロ氏でしたが、彼の微笑みは穏やかでした。キューバの歴史が動いている潮流を現地で体感し、また、キューバにとっての英雄のひとりを間近で見ることができて、非常に幸運な体験だったと思います。