カリブの海賊と戦った最前線の砦

キューバ第二の都市サンティアゴ・デ・クーバの歴史は、1515年にスペイン提督ディエゴ・デ・ベラスケスによって、天然の良港サンティアゴ・デ・クーバ湾の東に建設されたところから始まります。この時代、カリブ海では海賊が跋扈し、略奪や密貿易がさかんに行われていました。そこでスペインは彼らの襲撃を防ぐために、また紛争が続いていたイギリス軍からの攻撃に耐えられるように、湾の出口の高さ60メートルの岩の岬に砦を築きます。イタリア人軍事技師によって1638年に設計されたルネッサンス様式の美しく堅固な砦は、アメリカにおいてスペインが築いた軍事建築物の傑作として、1997年に世界遺産に登録されました。

美しい砦の向こうには紺碧のカリブ海が広がります 美しい砦の向こうには紺碧のカリブ海が広がります

天気が良ければ快適なバイクタクシー

この砦は「モロ要塞」の名で知られていますが、正式には「サン・ペドロ・デ・ラ・ロカ城」といいます。市中心部からは南西に約10km離れているので、タクシーをチャーターして訪れるのが一般的です。節約派なら12番のバス(1ペソ≒約5円)か、トラックの荷台にシートを設けた乗り合いのトラックバス(2ペソ≒約10円)に乗って、終点で下車。岬の上に要塞が見えるので、要塞まで歩いて登っていきます。私はバイクタクシーを往復でチャーターして、要塞で1時間待ってもらいました。チップを含めて5CUC(約600円)。市街地を抜けて田舎の道をバイクで走るのは、風がとても気持ちよく、思った以上に楽しめました。

カリブ海に向かって立つ孤高の貴婦人

バイクから降りて土産物屋とカフェが並ぶ小道を進むと、視界が開けた先に要塞が現れました。近づいて外観を見ます。軍事施設に“エレガント”という形容は相応しくないかもしれませんが、第一印象はエレガントで女性的なイメージ。とても美しい要塞です。このような岬の突端に造られた要塞は、スペイン本土でもなかなか見られません。町から離れた、高さ60メートルの崖の上にぽつんと築かれた砦は、ちょっと寂しげで近寄りがたい、孤高の貴婦人といった佇まいです。要塞の後ろには紺碧のカリブ海が広がり、湾の対岸まで見渡せました。では入場料4CUC(約480円)を払って要塞の中に入りましょう。

水平線の向こうに海賊船が見えてくる??

平地ではなく崖の斜面に造られているので、要塞の構造は、下から上に迷路のように部屋が築かれていて、穿たれた砲門から部屋の中に海風が吹き込んできます。テラスを歩いていると、ヨーロッパの小さな旧市街の路地に迷い込んだような気分。ハバナにも同名の要塞がありますが、こちらの要塞は海上からの位置が高いために、周囲の展望の雄大さが全く違いました。海に向けられた砲台の横に立って、カリブの海賊たちと戦っていた時代に思いを馳せていると、なんだかタイムスリップしてしまいそうな錯覚に陥ります。にぎやかなサンティアゴをしばし忘れて、なんとも雄大な気分になれるひとときでした。