イスナガへの観光列車に乗ってみた

前編からの続きです。ロス・インヘニオス渓谷に行く観光列車は、トリニダードとイスナガ駅を往復します。トリニダード駅を朝9時30分に出発し、イスナガで1時間半ほどフリータイム。帰りはイスナガ駅を12時に出て、その先のガチナンゴ駅のそばにある、昔の農場主の邸宅を利用したレストランで食事休憩をして、トリニダードに戻ってくるのは15時になります。チケットは往復10CUC。トリニダード駅の窓口は朝9時に開きます。わたしは当日の朝でも問題なくチケットを手に入れることができました。列車は3両で、真ん中の車両がバーになっており、モヒートなどのカクテルもオーダーできます。

奴隷を監視していたマナカ・イスナガの鐘楼 奴隷を監視していたマナカ・イスナガの鐘楼

車窓から見た、緑豊かな渓谷

トリニダードからイスナガまでは15キロ弱ですが、列車は1時間かけてゆっくりと進みます。町を出るとすぐに風景が変わり、遠く山々に囲まれた緑濃い大地が広がりました。ロス・インヘニオス渓谷は、サン・ルイス、サンタ・ロサ、メイェールという3つの渓谷の総称です。車窓からは、放牧された牛や馬、馬や馬車に乗って移動する人々、トリニダードから乗馬トレッキングに来ているツーリストたちが見えました。線路沿いにところどころ集落や農家の家があり、子供たちが手を振ってきます。民家のそばには、たわわに実のなったマンゴーやバナナの樹が鬱蒼と茂っています。とても豊かな風景でした。

負の遺産、奴隷監視塔からの風景

マナカ・イスナガの塔までの道の両側には、この土地の名産である「ファゴッティング」と呼ばれる刺繍を施したクロスがはためいていました。白人ツーリストたちが足を止めて品定めしているのを横目に、塔に向かいます。1835年に建てられた、高さ45.5メートルの7階建の塔は、工場や畑での作業時間を告げる鐘楼であり、また奴隷たちの逃亡や反乱を見張るための監視塔でもありました。1CUCを払って、ぎしぎしときしむ136段の木造の階段を上った最上階からは、ロス・インヘニオス渓谷が360度見渡せます。風が通り、見渡す限りの絶景でしたが、わたしはなんだかとても悲しい気分でした。

村の子供たちに笑顔をもらう

塔の横には、この辺りに広大なサトウキビ農園を所有していたイスナガ家の邸宅があり、今はレストランになっています。庭に出ると、かつて鐘楼に吊るされていた大きな鐘が置かれていました。奴隷たちは、いったいどんな気持ちで毎日鐘の音を聞いていたのでしょうか。塔の裏には小さな村があり、まだ時間があったのでひとりで歩いてみました。村の子供たちが、鳥かごを手にわっと集まってきます。みんな自慢の鳥を見せにきてくれたようです。ここでようやく楽しい気分になれました。キューバの負の遺産であるロス・インヘニオス渓谷。今はのどかで平和で、とても美しい場所でした。(データは2015年4月のもの 1CUC=1米ドル)