砂糖の生産と奴隷貿易で繁栄した町トリニダード

キューバ各地に、スペイン統治時代の町並みを残す歴史的な古い町があります。これらの町はみな、建物の外壁がピンクやブルー、ペパーミントグリーンなどのパステルカラーで塗られていて、なんともカラフルでかわいらしい景観を生み出しているのが特徴です。その中でも特に人気が高く、多くの観光客を惹きつけているのが、古都トリニダード。この町は16世紀初頭にスペイン人によって開発され、18世紀にサトウキビのプランテーションによる砂糖の生産で発展しました。砂糖と奴隷貿易によって一時は大いに繁栄しましたが、19世紀に奴隷制度が廃止され、砂糖相場が暴落、それに続く戦乱のせいで、町は次第に衰退していきました。そして、残された町並みだけが、当時の繁栄ぶりを今に伝えているのです。

こちらが当時使われていた蒸気機関車です こちらが当時使われていた蒸気機関車です

プランテーション跡に今でも残る奴隷監視塔

大航海時代以降、スペインやフランス、イギリスは、こぞってカリブ海の島を植民地化し、サトウキビのプランテーションを作りました。ヨーロッパに広まった紅茶やコーヒーに砂糖を入れることが流行し、砂糖の需要が急激に高まったためです。トリニダード郊外に広がるロス・インヘニオス渓谷には、18世紀から19世紀にかけて、大規模なサトウキビのプランテーションが築かれました。最初の働き手だった先住民が絶えた後は、奴隷貿易によってアフリカから多くの奴隷が連れてこられました。1827年には、この渓谷で60以上の製糖工場が稼動し、1万人もの黒人奴隷がプランテーションや工場で、不休で働かされていたといいます。渓谷には、今も奴隷たちが働いていた砂糖工場や、奴隷を見張るための監視塔が残っています。

サトウキビ運搬用の鉄道を走る観光列車

「トリニダードとロス・インヘニオス渓谷」は、1988年という早い時期に世界遺産に登録されました。現在、トリニダードの町から、渓谷にある奴隷監視塔「マナカ・イスナガ」まで、観光列車が運行されています。キューバの鉄道の歴史は古く、最初の鉄道の開通は世界で7番目に早い1837年のこと。日本(1872年開通)より35年も前に開通しているんですね。トリニダードの鉄道は1880年代に、原料のサトウキビを畑から製糖工場へ、そしてできあがった砂糖を港まで運搬するために敷かれました。この観光列車、以前はアメリカ製の「本物」の蒸気機関車が牽引していました。今は、ディーゼル機関車の列車が走っています。(後編に続く)