カリブ海に浮かぶウティラ島

中米のホンジュラスという国にウティラ島という島があります。ホンジュラスは太平洋と大西洋の両方に面していますが、この島は大西洋側(カリブ海側)にある小さな島。首都テグシガルパからバスで6時間の港町、ラ・セイバから、フェリーでわずか1時間の船旅で行け、旅行者の間では気軽にダイビングのライセンスが取れる場所として知られています。私は島自体の印象はさほどないのですが、数年前、この島に行った帰りに遭遇した事件がとても印象に残っています。

中米のホンジュラスの短い船旅で、意外な事件に遭遇 中米のホンジュラスの短い船旅で、意外な事件に遭遇

船が急停止。その訳は?

ウティラ島と本土のラ・セイバを結ぶフェリーは、午前と午後の1日2便。私は朝の便に乗り、フェリーは順調に海を進んでいました。島が見えなくなったころなので、ちょうど中間地点ぐらいでしょうか。中でくつろいでいた私ですが、船が急に減速して止まりました。乗客たちがあわただしく甲板のほうへ行きます。「何かあったのかな」とその後についてデッキに出てみると、みな片方の船べりに寄って何か見ています。私も後ろからのぞいてみました。すると、長さ10メートルぐらいの小船が、半分以上沈みかけて浮かんでいたのです。

あの船の乗員はどこへ?

何らかの理由で、沈没しかかっているのでしょう。小船にはひと気がありませんでした。この船がどのくらい漂流していたのか、また人が救助されたのかもわかりません。フェリーは止まって様子を見ているようでしたが、やがてまた動き出しました。それから10分ほどしてからでしょうか。またフェリーが止まりました。乗客たちはまたデッキへ向かいます。波間に救命胴衣を付けて浮かんでいる人がいました。あの船の乗員のようです。偶然、見つかったのでしょう。その人は救助され、甲板に引き上げられましたが、かなり疲れきっているようでそのまま座り込んでしまいました。そしてフェリーは再出発したのですが、減速したままのスピードです。乗客も、みなデッキから海面を見ています。これは?

こんなハプニングも旅ならでは

他の乗客に聞いて、事態が飲み込めました。実はもうひとり、漂流している人がいるというのです。船に乗っていた乗客、ほぼ全員が甲板に登り、全員で目を皿のようにして、そのひとりを探します。しかし船で海に出た事がある人にはわかると思いますが、海面に人の頭ぐらいが出ていたとしても、白い波頭が立てばその後ろに隠れてしまいますし、波の影に見えてしまうかもしれません。私もしばらく一緒になって探しましたが、「これは砂場で落とした針を探すようなものだ」と思いました。フェリーは周辺をぐるぐると40分ほど回りました。もう無理じゃないかなと思った瞬間、甲板のどこかで声が上がりました。フェリーが向きを変え、そちらに向かいます。とうとう「落とした針」を見つけたのです。乗客みんなの顔に、喜びの表情が見えました。まるで映画の一場面のようなできごとでした。こんな船旅になるのも、旅ならではのことでしょう。