人類の弾圧や虐殺の歴史をたどる博物館

今回はメキシコシティにある珍しい博物館を紹介しましょう。その博物館の名は、「メモリア・イ・トレランシア博物館」。これではよくわからないと思うので、私が勝手に「記憶と寛容の博物館」とでも意訳しましょう。これはメキシコのことではなく、世界中で起きた、ジェノサイド(虐殺)、ホロコースト(ユダヤ人に対して行われた集団虐殺)、圧政、人種偏見などの歴史を、写真や映像、資料の展示で知ることができる意欲的な博物館なのです。場所はメキシコシティ中心部にあるアラメダ公園の、ベニート・フアレス記念碑のちょうど道を挟んで向かいあたりです。

写真や映像、パネル、遺品などで、圧政や虐殺の歴史を学習できるようになっている 写真や映像、パネル、遺品などで、圧政や虐殺の歴史を学習できるようになっている

ナチスドイツによるホロコーストの展示

メキシコにはスペインからの独立後、独裁者などの圧政に苦しみ、また革命を経験するなどの歴史がありました。そのため、メキシコの各市にあるような小さな博物館でも、独立戦争やメキシコ革命についての展示コーナーがたいていあります。つまり、「自由」に対する意識はかなり強いと言っていいでしょう。「自由」は与えられるものではなく、勝ち取るものだということも。この博物館では、スペイン語と英語のガイドツアーも行っているので、言葉がわかる人ならガイド付きのツアーもいいでしょうね。私はゆっくり見て回りたいので、自分のペースで歩くことにしました。最初の方にかなり大きくスペースを取ってあるのは、ナチスドイツによるユダヤ民族迫害のコーナーです。ナチスが政権を取った1933年から時間をかけて行ったプロパガンダ(宣伝)の様子、そして強制収容所…。写真展示だけでなく、当時ユダヤ人が収容所に送られるために押し込まれた貨車も展示されています。

止まない圧政とそれと闘う人たち

そのあとも世界では虐殺や圧政が続きます。カンボジアではポルポト派の虐殺が自国民に向けて行われました。そのときに殺された人々の写真が、壁一面に飾られています。虐殺は1980年代以降も、グアテマラ、スーダン、ルワンダ、旧ユーゴ諸国で続き、その展示コーナーが次から次へと続きます。人類はいつまでたっても進歩しないということが重苦しくのしかかってきます。社会科見学でやってきている中学生や高校生のグループも、皆、険しい顔をしています。一方で、ガンディー、キング牧師、ダライ・ラマ、ネルソン・マンデラのように、自由のために戦っている人たちの展示もあり、そこで少し勇気付けられます。

日本ではレアなタイプの博物館

結構ヘビーな展示なので、私は見終わった後は2階のカフェで休憩してしまいました。ここのカフェはオススメですよ。博物館に入らなくてもカフェ利用はできます。博物館の開館時間は火〜金曜が9:00〜18:00、土・日曜が10:00〜19:00です。別料金ですが企画展も行われているので、そちらもチェックしてみてください(www.myt.org.mx 私が行った時はヨーコ・オノ展でした)。入館料は75ペソ(約500円)です。それでは、いわゆるメキシコの観光の王道ではないかもしれませんが、この博物館、訪れてみてください! 他では(特に日本では)なかなか見ることができない内容だと思います。