インカの「聖なる谷」の穴場的スポット

ペルーのクスコ郊外、ピサックとオリャンタイタンボの間に広がる谷は「聖なる谷」と呼ばれ、インカ帝国が残した遺跡を各所で見ることができます。旅行者にも人気があり、クスコの旅行会社はどこも「聖なる谷」ツアーを催行しています。実はこのツアーには含まれず、自力でいくにはちょっとアクセスが悪いために、訪れる人こそ少ないのですが、非常に珍しい風景が見られる場所があります。そこは「マラスの塩田」と呼ばれ、インカ時代の前のプレ・インカの頃から600年以上にわたって続いてきた塩田なのです。

アンデスの山あいに現れる真っ白いインカの塩田 アンデスの山あいに現れる真っ白いインカの塩田

アンデスに現れる天空の塩田

プレ・インカの時代、アンデスの渓谷から湧き出る水が非常に高濃度の塩水であったことから、渓谷の急傾斜に塩田を築き、天日干しにすることで塩の生産が始められました。この良質な天然塩は、インカ帝国時代は「インカの白金」と称えられ、その生産と分配は帝国が管理していました。標高3000mの茶色い渓谷に突然現れる真っ白い塩田は、まるで山の残雪のようにも見えます。この「天空の塩田」は3000枚以上あり、地元の村人が数枚ずつ所有しています。相互扶助によって塩の生産は続けられ、地元の人の大切な現金収入源になっているのです。

インカの塩をお土産にしよう

塩田では、細いあぜ道を歩いて奥まで行くことができます。塩田の端には小さな水路があり、水が勢いよく流れていますが、これを舐めてみるとしょっぱいのを通り越して苦く感じます。なにしろ、ここの塩分濃度は21%と海水の7倍の濃さですからね。塩の作り方はインカの頃から変わらず、600年の伝統が受け継がれてきました。標高の高いこんな斜面で、繁忙時には50kgの塩の袋を担いで倉庫まで何往復もするというのですから、想像を絶する重労働に違いありません。塩田の入り口には小さな土産物屋があり、ここで採れた塩を買うことができます。インカの採れたての塩は粒が粗くまろやかな味で、とてもいいお土産になると思います。

インカの農業試験場モライ遺跡

マラスの塩田に行くなら、クスコで送迎の車をチャーターするのが最も手っ取り早いでしょう。車をチャーターしたら、「聖なる谷」ツアーに含まれないもうひとつのマイナーな見どころ「モライ遺跡」も合わせて行くことをおすすめします。モライ遺跡は、標高3550mに位置する巨大な円形のすり鉢状の段々畑で、底から上部まで30mの高低差による気温差を利用して、同時に何種類もの作物を育てる実験をしていたという、インカの農業試験場でした。豊かな農作物に恵まれているアンデスの農業ですが、これもインカ時代の高度な知識と実験によって生み出されたものなのかもしれませんね。