インカ帝国の都だった都市・クスコ

16世紀、インカ帝国の首都として栄えていたアンデス高地にある都市、クスコ。しかしスペイン人による征服後、インカの宮殿や神殿は軒並み破壊され、その上に教会や市庁舎といったスペイン風の街並みが新たに建設されます。そのため、現在この街を歩いていてもなかなかインカ時代を偲ぶ風景に出会うことはありません。それでもインカ時代の建物の土台や精緻な石組みがわずかに残り、それを見るとここがかつてはインカの都市だったことを思い出します。今回は、そんな世界遺産に登録されている都市、クスコに残るインカ時代の見どころを紹介しましょう。

標高3000m以上の高地に広がる都市

1200年代からスペイン人に征服される1532年までの300年あまり、クスコはインカの首都でした。クスコの町の平均標高は3399mですが、街は北から南へ少し傾斜しており、街中でもある程度の高低差があります。街の中心は、北側にあるアルマス広場です。ここから北は急に傾斜がきつくなり、丘へと入っていきます。このクスコを見下ろす北の丘上には、「サクサイワマン」というインカ時代の宗教施設、あるいは軍事施設の遺跡が残っています。

町の中心はアルマス広場

この町は一説によると、当時の人々が神聖視したジャガーの形をしているそうで、その頭の部分にあたるのが現在のアルマス広場一帯なのだそうです。アルマス広場は南米のどのスペインの植民都市にある広場で、どの町でも市庁舎とカテドラルが置かれています。しかし実はこの場所は、インカ時代も「戦士の広場」として使われていました。閲兵などが行われていたのでしょうか。ただし現在のアルマス広場に立っても見えるのは教会やスペインのコロニアル建築で、インカ時代を思い浮かべるのはなかなか難しいです。

インカの石積みが残るロレト通り

このアルマス広場の南東にあるラ・コンパニア・デ・ヘスス教会から向かってその左側にある、細いロレト通りに入ってみましょう。この通りは、クスコでインカの石積みが残る数少ない通りのひとつです。距離は200mほどですが、現存するインカの石積みの道の中ではもっとも長いといいます。インカの石積みの特徴は、セメントなどの接着剤を使わずに、石を積み上げていくこと。石と石はピッタリ合わさり、カミソリの刃すら通らないと言われています。この通りの左はインカ時代には「太陽の処女の館」が建っていた場所で、現在はサンタ・カタリナ修道院があります。右側にはかつてはワイナ・カパック宮殿が建っていました。もちろん今はインカ時代のものは何も残っていません。(その2に続く)

インカの石積みが残るロレト通り。内側に傾斜しているのは、耐震のためだとか インカの石積みが残るロレト通り。内側に傾斜しているのは、耐震のためだとか