- 原田慶子
- ペルー・リマ在住フリーランスライター。ペルーの観光情報を中心に文化や歴史、グルメ、エコ、ペルーの習慣や日常などを様々な視点から紹介。『地球の歩き方』『今こんな旅がしてみたい』『トリコガイド』『世界のじゃがいも料理』などペルー編の取材協力多数。「Keikoharada.com」にてペルー情報発信中。
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チャンカイ文化を代表する人形の酒瓶「チーナ」。その顔には鳥や魚の模様が描かれており、どれ一つとして同じものはない
数あるリマの博物館の中で、一番にお勧めしたいのが「天野博物館」だ。ここは1000〜1400年に栄えたチャンカイ文化をメインにした、アンデス文明に関する本格的な考古学博物館。収蔵品は数万点、うち300点ほどを常設展示している。耐震構造を施しつつ見る側の視点に立った展示方法は、独自性があり素晴らしい。特筆すべきは、館内の説明をすべて日本人スタッフが日本語で行ってくれること。「色々見たけど、どれも同じようで…」となりがちな博物館巡りだが、天野博物館の解説は大変分かりやすいと好評だ。ここを訪問すれば、アンデス文明への理解と興味がぐっと広がるだろう。
人物を模した美しい帯。1000年近くの時を経ても色褪せることなく、見る者を魅了する
チャンカイ文化の特徴は白地黒彩の素朴な焼き物と、多種多彩な織物にある。歪みや不規則性をわざと楽しんだような焼き物は、日本の侘び寂びに通じる趣があり、また織物や染織技術の高さは比類がなく、綴れ織や羅(ら)、絞り染め、手描き染め、レースなど、現存するほとんどの技術を有していた。当時あまり注目されていなかったこのチャンカイ文化の素晴らしさを誰よりも早く理解し、その発掘と保存に努めたのが、この博物館の創始者、故・天野芳太郎氏だ。実業家として南米各地で成功を収め、その全財産をチャンカイの遺跡発掘と保存に投じた日本のシュリーマン。博物館の入口近くには、穏やかな笑顔の天野氏の写真が掛けられている。
天野氏の写真が掲げられた、落ち着いた玄関ホール
チャンカイ文化の発祥の地は、リマの北約100kmにあるチャンカイ谷。2005年8月、この谷の一角で、アンデス古代文明の歴史を塗り替えるであろう大発見があった。それが「ラス・シクラス遺跡」だ。調査の結果、今を遡ること約5000年前の古代神殿跡と分かり、当時日本でも「アメリカ最古級の神殿発見」と大々的に報道されたのは記憶に新しい。現在、天野博物館主導で発掘が行われており、アンデス文明の形成過程を見直すきっかけになるだろうと考古学界でも期待されている。天野氏が長い年月を掛け愛し守ってきたチャンカイの地で、今また新しい発掘活動が始まっている。同じ日本人としてぜひ応援していきたい。
かわいらしいモチーフを配した岩塩や革製品は、博物館ならではのお土産だ
博物館の見学を堪能したら、ぜひミュージアムショップへ。ここには博物館オリジナルの商品がたくさんあり、どれも質が高い。オーガニックコーヒーやチチカカ湖近くのアサンガロで採取される岩塩は、博物館所蔵の土器や織物のモチーフが描かれた袋に入っていてお土産に最適。また博物館限定のペンダントや革製品、土器の拓本など珍しい物もたくさんあり、人とはちょっと違うお土産をという人にももってこいだ。天野博物館はこれほど満足度が高いにも関わらず、天野芳太郎氏の意志を継ぎ、入場料・ガイド料を取らない。このような素晴らしい博物館を将来に残すためにも、ぜひ買い物や寄付などで支援していきたいものである。
閑静な住宅街に建つ天野博物館。ブザーは門の右上にあります
■天野博物館(museo Amano)
住所:Calle Retiro 160 Miraflores, Lima(Av.Angamos Oeste.Cuadra 11)
電話:+51-1-441-2909/11:00〜18:00
休館日:土、日、祝日(ペルーの祝日に準じる)
WEBサイト:http://www.museoamano.com/
日本語ガイドツアー:15:30、16:30
※見学はガイドによるツアーのみ(約1時間)
必ず希望日の1〜2日前までには電話予約をすること(日本語可)
※館内は写真撮影、録音など禁止。
ご理解とご協力のほど、よろしくお願いします。
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2009/06/01)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
※この記事はガイドレポーターの取材によって提供された主観に基づくものであり、記事は取材時時点の情報です。
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