そもそも“香港マダム”って実在するの?

香港の高級品を紹介する決まり文句として、もっとも使い古しの言葉は“香港マダム”でしょう。「香港マダムお気に入りのブランド」「地元の香港マダムもお忍びで利用するスパ」などなど。でも私は、香港に何度も来ているのにその“香港マダム”なるジャンルの女性を今まで一度も見たことがありません。香港マダムって、本当にいるの!? 彼女たちと私との動線は、いつ、どこで交わるのでしょう?もしかしてそれはあそこ……私は中環(セントラル)の高級ホテル「マンダリンオリエンタル」へ向かいました。

まぼろしの“香港マダム”を探して、有名レストランへ まぼろしの“香港マダム”を探して、有名レストランへ

マンダリンオリエンタルホテルのダイニングへ!

このホテルに宿泊したことはありませんが、このときは、最上階のフレンチレストランのランチに行ってみたのです。必要以上にだだっ広くない、黒や木の色のシックな内装のロビーを通り、シンプルでシャープなつくりのレストラン「ピエール」へ。私はフランス人シェフの鬼才ピエール・ガニェール氏のファンで、パリ本店でも東京でも行き、この香港でも行ってしまったのです(立派な“追っかけ”ですね)。ですからまぼろしの“香港マダム”を探すことだけが目的というわけではなかったのですが……なんと、隣のテーブルに、まさしく私が思い描いていたのとぴったり一致する“香港マダム”がいたのです!これにはやっぱり興奮しました。

絵に描いたような香港マダムぶりに感動……

50歳くらいの女性二人連れで向かい合っていて、二人ともテーブルにスマホを置いて、時折電話でしゃべっています。一人は黒髪をいわゆるモダンガール風に短く整え、目の周りを黒のアイラインでぐるりと囲んでいます。もう一人は顔は見えませんが、耳たぶに特大の真珠のイヤリングを下げています。二人ともいかにも高級そうなスーツを着ていて、ひっきりなしにおしゃべりに興じ、ヨーロピアンのメートル・ドテルが「ようこそ、毎度ありがとうございます。本日のコースのご説明をいたしましょうか。」とおもむろにやって来ると、「あらー待ちくたびれたわよ。一体いつ来てくれるのかと思った。早く来てくれなくちゃメニューが決まらないじゃないの!」と親しげに叱りつけています。そのひとつひとつのディテールの何もかもが、“香港マダム”そのものでした。やっぱり、いるところには、いたのです!私は、また香港で大きな目的をひとつ達成したような気分になりました。

もちろんお料理も最高です

さて、「ピエール」のお料理はというと、もちろん非の打ち所のないものでした。特にどっさりのアミューズグルと寒天のシートを使ったデザートは、ガニェール氏の真骨頂発揮という味でここまで来た甲斐がありました。馴れ馴れしすぎない私好みなサービスも、東京のピエール・ガニェールより好感を持ちました。香港というと、つい中華料理に目が向きますが、あえてフレンチを選んでみるのも、こんな発見があって楽しい経験です。