雷州で見た、犬好きにはつらい光景

「犬好きには、見るに堪えない光景だわ」。ここは中国南部の広東省の西端にある雷州半島です。雷州半島の雷州はのんびりした地方都市です。この町の名物は「白切狗(バイチエゴウ)」です。白切狗とは、犬のまる茹でです。夕方、市が立つ通りには、毛をぬいて茹でた犬をぶらさげた白切狗の屋台が並んでいます。「燉狗(トゥンゴウ)」という犬の煮込みの看板も目につきます。昼間には、檻につめこまれた犬、それも本当に悲しい顔をした犬たちを運ぶトラックと何度もすれ違いました。犬好きの人なら、自分たちの運命を悟っているような悲しい顔した檻の中の犬を見ているだけで辛いです。その顔を見ていると、「どうして犬を食べるの?」という疑問が沸いてきます。

雷州の神様「石狗」とは?

中国の食文化を否定するつもりはありませんが、疑問が浮かぶのには、理由があります。雷州の「石狗」は有名です。石狗は、石で造った犬の置きものです。石狗の外見は、沖縄のシーサーにも似ています。大きな口をあけて笑っている石狗は、村の入り口、海辺、家の門などにおかれ、守り神を役割を果たしていました。文革の時に「四悪」に指定されたので、徹底的に破壊され、今では博物館でしか見られなくなりました。雷州では犬は神なのです。それならなぜ、この地に犬を食べる文化が根付いているの? 尊敬している神を食べるって、理解不能です。

雷州の人が犬を尊敬する理由

中国の検索サイト上には、いくつか説がありますが、雷州の人々が犬を尊ぶようになったという物語が出ていました。南朝(420〜589)の時代、この地に住んでいた猟師、陳は9つの耳を持つ犬を飼っていました。この犬が、大きな卵を掘り出してきました。雷があたり、卵が割れると、中から両手のひらに雷と州の字が入った子供が出てきました。この子供は陳文玉と名付けられ、後に雷州で最初の知事になりました。この人物が大変有能な人物だったので、犬が尊敬されるようになったようです。でも、これだけじゃ、犬を食べる理由がわかりません。私が雷州博物館で教えたもらった説明はこうです。

雷州に犬食の習慣ができたのは最近?

雷州は海南島に近く、目の前はベトナムです。遠い昔、雷州に住んでいたのは中国の中心の人からすれば、少数民族です。この人たちは、ベトナムの少数民族とも関係がありました。このベトナムの民族が、自分たちは犬の生まれ変わりと信じており、後に雷州の民族と混血が進みました。そのため、雷州には犬を食べる文化はなかったそうです。近代になり、漢民族が大挙してやってきました。漢民族には、犬を食べる習慣があります。雷州人も少しずつ漢化し、犬を食べるようになったそうです。だから、雷州で犬を食べるのは、若者や中年で、お年寄りは今でも犬を食べないそうです。私はこの説に納得できましたが、犬好きの人には、雷州はつらいところです。