パプアニューギニアってどんな所?

パプアニューギニアはオーストラリアの北に位置し、グリーンランドに次いで世界で2番目に大きいニューギニア島の東半分と、その周囲に散らばる島々を領土とする国です。険しい山岳地帯やワニのうようよいる湿地帯が住民の交流を隔て、人々は部族単位で生活し、なんと800以上の言語が存在するそうです。美しくも過酷な熱帯の自然と、奇抜極まりない民族衣装や民族アート、宗教儀式などの文化が、パプアニューギニアのおもな特徴といっていいでしょう。

水木しげるのニューギニア体験

そんな強烈な個性をもつパプアニューギニアを、第二次世界大戦の頃からずっと愛し続けた一人の日本人がいました。『ゲゲゲの鬼太郎』などの妖怪漫画で知られる水木しげるです。氏は戦時中ニューギニア島に出征し、所属部隊のなかでの唯一の生き残りとなり、片腕を失い、マラリアにかかって苦しんですらもこの地を愛しました。そして戦争が終わると、ニューギニア島での現地除隊を願い出たのです。結局医師のすすめにより帰国しましたが、ここで一生を送ってもいいとすら思ったパプアニューギニアの存在は、氏の考え方や作品に大きく影響していることは間違いありません。

ニューギニア島での妖怪との出会い

その影響のひとつが妖怪です。氏は「都会の電気が闇を消し、妖怪を追い出した」と言っていますが、その反対に、いまだ完全な闇の存在するパプアニューギニアの夜は、精霊や妖怪といった存在を身近なものに感じさせるのでしょう。それを実証するかのように、水木しげるは戦争中、幾度か妖怪を目の当たりにしたことがあると言います。夜ジャングルを逃げ回っていた時に遭遇した「ぬりかべ」、山中で木を切る音や、大木が倒れる音がする「天狗倒し」、そして死者の霊が夜の海に白くなって泳ぐ「しらみゆうれん」。こうした不思議な体験が、氏のその後の活動における力のひとつとなったことでしょう。

「妖怪がいる世界は、幸福である」

踊りなどの部族の文化や、すばらしい細工の仮面彫刻も、水木しげるが心を引かれたものでした。パプアニューギニアの各部族は儀礼の際に、ときに神をかたどった個性的な衣装に身を包みます。水木しげるがニューギニア島滞在中に仲良くなったのは、とんがった仮面をかぶり、蓑のようなものに身を包んだ衣装がコミカルなトライ族でした。また、ニューギニアの各部族は精霊への信仰にあつく、その形をとらえて仮面などの彫刻作品を生み出す技に長けています。見えないものを見る彼らの能力とシンプルな暮らしぶりを目の当たりにして、氏は「人間が幸福になるには文明よりも自然のほうが不可欠」という信念を確かなものにし、さらには「妖怪がいる世界は、幸福である」と言うにいたったのです。