国際派の漫画化が描く外国の恋愛

「外国を舞台にした漫画を教えてください」。時折インターネット上でこんな質問を見かけることがあります。海外を描いた漫画はたくさんありますが、今回私がおすすめしたいのが『地球恋愛』(講談社発行、2011年発売)。作者は、映画化もされた『テルマエ・ロマエ』と同じヤマザキマリです。世界のあちこちの国を舞台とし、現地の中高年の恋愛や夫婦愛を扱った意欲作。イタリアやアメリカなど、世界各地で暮らした経験がある彼女ならではの、現地の環境や習慣をよくふまえた上での描写が印象的です。

海外が舞台のおすすめ漫画。熟年恋愛を描いたヤマザキマリの『地球恋愛』 海外が舞台のおすすめ漫画。熟年恋愛を描いたヤマザキマリの『地球恋愛』

『地球恋愛』のストーリー

この漫画はオムニバス形式で、第一巻の舞台はイタリア、ツバル、デンマーク、ブラジル、シリア、アメリカの6ヵ国。イタリアの回では、離婚や死別を経験した60歳の男性二人の友情と、若い女性との間の三角関係を描き、ブラジルの回では、経営が苦しいバーの女店主と売れないギタリストがお互いの思いに気付くまでのストーリーになっています。海外を扱っているのに加え、恋愛物語の主人公が中高年というのはなかなか珍しく、それもこの漫画の大きな特徴になっています。

さまざまな愛の形を描く

そして、独身中高年男女の恋愛ばかりでなく、この漫画には夫婦愛や家族愛も描かれています。ダマスカスへ出稼ぎに出たまま戻らない夫を、家庭を支えながら待つシリアの遊牧民女性。家の守り神とされる妖精・ニッセを信じ、子供の同居のすすめにも応じず家を守ろうとするデンマークの田舎の主婦。アメリカ・シカゴの高層マンションのコンシェルジュが、住民女性に娘を紹介される話など……。場所はさまざまですが、6つのどの話にも共通しているのは、人が人を思いやる気持ち。心温まる読後感のものばかりです。

現地の人々の習慣から考え方まで

さて、旅好きの視点から、私が最も気に入ったのはツバルの回でした。6ヵ国のうち唯一行ったことのない国でありながら、その国らしさを最もよく表しているように思えたからです。グータラな夫に不満を持つ女性の妹が、移住先のニュージーランドから帰国。妹が夫を好きになったらどうしようと悩む女性の姿を描いています。コロコロした人々の体型、海に沈みつつあるという現状、祭りの多さのほかに、「魂が島から離れられない」という、普通の旅ではなかなか見えてこない人々の考え方までを描いた稀有な作品だと思います。現在発行されているのは一巻のみですが、今後も引き続き、世界のどこかで起きているささやかな人間ドラマの一片を見せてほしいものです。