切っても切れないインド人と牛との関係

旅行などでインドを訪れると、車道や路地を我が物顔に歩き回っている牛に出合うことでしょう。インドの風物詩ともいえる光景ですが、こんな風に牛がのんびりしていられるのも、インドの人口の約8割を占めるヒンドゥー教徒が牛を神聖視しているためです。牛は破壊神シヴァの乗り物とされ、殺したり食べたりすることはタブーです。その一方で、牛乳とその加工品は神聖なものとして宗教儀礼で使われています。そして牛たちの落し物の用途もさまざま。日本では肥料にするぐらいしか使い道を聞きませんが、インドではどのように活用されているのでしょうか。

インド人の生活の知恵、虫除けにもなる牛糞の活用法。牛の排泄物から新製品開発も インド人の生活の知恵、虫除けにもなる牛糞の活用法。牛の排泄物から新製品開発も

燃料としての活用法

インドの田舎では、牛糞をわらと混ぜて丸くしたものを家の壁に貼り付けて乾燥させている光景をよく目にします。1週間ほどしてそれがカラカラに乾くと、料理などの煮炊きに使う燃料となるのです。よく燃えて火むらが少なく、しかも長くもつという優れものです。調べによると、インドでは電気を使わず、このような牛糞と薪を燃料としている世帯が、いまだ全体の半分近くもあるとのこと。また、独特の不浄観をもつインド人にとって、乾燥牛糞は浄性が高いとされ、儀礼の際の調理に用いられたりもします。どうやらインド人は、牛だけでなく牛の体から出るものも、神聖なものと考えているようです。

床に塗って、撒いて虫除けに

また、インドの伝統的な家庭では、牛糞を土や粘土と混ぜて水で練り、床や壁に塗ります。牛糞には虫が嫌う成分が含まれており、こうすると虫除けになり、殺菌作用もあるのだそうです。また、牛糞を水で溶き、給食室の周囲に撒いて「消毒」をする田舎の学校もあるとのこと。逆に衛生状態が心配になってしまうような話ですが、乾いてしまえばとくに臭うことはないようです。このほかにも用途があり、牛糞を燃やした灰を、鍋などの研磨剤に使うとピカピカに仕上がるとのこと。牛を神聖視し、牛糞を浄とみなすがゆえに、これらの方法が伝えられてきたのでしょう。

牛の排泄物からの製品開発

伝統的な活用法はすでに述べたとおりですが、最近では牛の排泄物のさらなる利用法が研究されているそうです。牛糞から作る医薬品のほか、その粉末を配合したシャンプーや石けん、歯磨き粉、線香など、さまざまな製品の開発が進められています。私が驚いたのは、牛の尿を使ったソフトドリンクがすでに製品化されているようだということ。インドに行かれたら、伝統的な牛糞の活用法のほかに、こんな牛の排泄物を使った製品もチェックしてみてはいかがでしょうか。買う買わないはともかく、旅の格好のみやげ話になるに違いありません。