海外の野の花の名所とは

見渡す限り広がる野原一面に、ピンクや黄色の美しい花が咲き乱れ、風に揺れている……。幸せに満ちたこんな光景、いつか見てみたいと思っている人も多いかと思います。とくに女性にとっては憧れでしょう。野の花で有名な場所は世界のあちこちにあります。一面の花に包まれる南アフリカのナマクアランドや、インド北部の花の谷国立公園、オーストラリアの西オーストラリア州など……。写真を見ると、どこもすばらしいお花畑のようです。また、名前が知られている場所ではないですが、思いがけずきれいなお花畑が見られた場所もありました。中国の西部にある郎木寺です。

中国・郎木寺の花いっぱいの草原で行なわれる、チベットの鳥葬 中国・郎木寺の花いっぱいの草原で行なわれる、チベットの鳥葬

ふたつの省にまたがる不思議な町

郎木寺(ランムース)は、チベット名をタクツァン・ラモといいます。中国の奥地、周囲を山々に囲まれた盆地にある村で、標高は3370m。面白いのは、小さい村であるのに、細い川を隔てて甘粛省と四川省に分かれていること。もっとも、便宜上は四川省側の部分も甘粛省に属していることになっています。ここには仏教徒のチベット族とイスラム教徒の回族が暮らしており、村の中には仏教僧院のゴンパと、イスラム寺院のモスクが両方見られます。なかでも色止寺(セルティ・ゴンパ)と格爾底寺(キルティ・ゴンパ)という、2つの大きな仏教寺院があることで有名です。

鳥葬の丘は天国への花畑

また郎木寺は、チベットで一般的な葬儀法である鳥葬が行なわれることでも知られています。私がこれを見学したのは10年ほど前のこと。村からゆるやかな坂を上って30分ほどの場所に、すがすがしい草原が広がっていました。ピンクや黄色、白、青など、色とりどりの花が密集して咲き乱れ、まるで夢のような光景です。こんな美しい場所でこれから鳥葬が行なわれるということが、ちょっと信じがたい気持ちでした。

咲き乱れる花の向こうで

やがて遺体が運ばれてきて、鳥葬師が解体を始めました。少し離れた丘の斜面にはハゲワシが待機しており、解体が終わるとやって来て、争うように肉をついばみ始めました。鳥葬師はさらに骨をくだいたり、頭蓋骨を割ったりして残さず食べさせます。花畑の向こうで展開されるこのすさまじい光景を、旅行者は皆息をのんで見つめていました。この鳥葬ですが、2006年にチベット自治区では外国人の見学や撮影が禁止となりましたが、郎木寺ではまだ見られる模様です。ある夏の日に、のどかな村はずれの花が咲き誇る草原で行われた鳥葬。こんな天国のような場所だからこそ、人を天に送り出すのにふさわしいのかもしれない、と思えてくるような場所でした。