ギターを片手に放浪の旅へ

「ギターを持って放浪の旅がしたい!」と思ったことがありませんか? それも海外で。もしあなたが、時間に余裕があるバックパッカーなら、それも可能です。今回は筆者の体験談ですが、「こんな旅もできる」というひとつの例だと思って、読んでみてください。1990年代の半ば、私は世界放浪の旅に出ていました。日本を出て5ヵ月目に入ったころ、音楽に飢えていた私は(ipodやYoutubeもない時代です)、インドのデリーの楽器屋で、安いフォークギターを衝動的に購入してしまいました。ソフトケース付きで3000円程度の安物です。しかしそれから約1年、このギターは私と共にずっと旅をすることになります。

ギターを持って旅をしよう。気ままなスナフキン旅 その1 旅ならではのふれあい ギターを持って旅をしよう。気ままなスナフキン旅 その1 旅ならではのふれあい

安いギターなら心配も少ない

安いギターというのが良かったのでしょう。壊れても「仕方がない」と思える値段なので、移動の旅にあちこちぶつけながらも、バスや列車、そして船の旅を続けました。ギターはおもに泊まっているゲストハウスの部屋で弾いていましたが、たまに外で弾くこともありました。ギターを持って歩いていると、外国人自体が珍しい国や地域では、何かを弾いてくれと言われることがあります。正直言ってそんなにうまくない私ですが、そこで断り続けると座が白けるので、そんな時は恥ずかしいけれど弾きました。

テヘランの市バスで吉田拓郎を歌う

印象的な出来事があります。イランのテヘランに長距離バスで着き、そこから安宿に行こうとした時のこと。教えてもらった市バスに乗り換えると、運転手が「一番前に来い」と手招き。そこに行くと「何か一曲歌え」と言うのです。40人近く乗っていた乗客たちはみな期待のまなざしでこちらを見ているので、断れる雰囲気ではありません。そこで私は、市内を走るバスの中で、なぜか吉田拓郎の「落陽」を歌いました(笑) マイクがある訳ではないのでかなりの大声です。さて、バスが止まり、乗客が全員降りたので、終点だと思って降りようとすると、運転手は「いいから乗ってろ」みたいな身振りで私を制し、バスを発車させました。結局、彼は私のためだけに、そのまま市バスで近くまで連れて行ってくれたのです。何とも、旅らしい体験でした。

連行から逃れたのもギターのおかげ?

同じくイランで、国境の町に深夜に着いたことがありました。とりあえずバスターミナルの前のチャイの屋台に行き、回りにいた人たちにホテルの場所を聞くと、夜で危ないから連れて行ってくれるとのこと。待っていると、そこにいた客数人が「そのギターで何か弾いてくれ」と言うので、月並みですがレッド・ツェッペリンの「天国の階段」を弾きました(笑) 弾き始めてまもなく、そこに険しい顔をした革命防衛隊の民兵がやってきました。そして私に「こっちへ来い」と指図しました。厄介なことになったと思っていると、回りのイラン人がみんなで私をかばって、大丈夫だと言ってくれたのです。隊員は演奏も止まないので帰って行きました。演奏が終わると、約束通りお客のひとりが私を宿まで連れて行ってくれました。夜中の1時を回っていたので扉は閉まっていましたが、その男がガンガン扉を叩いて、宿の人を起こしてくれました。これもギターがあったからならでの、旅のひとコマです。