チベットに伝わるボン教とは

ボン教という、チベット固有の宗教をご存知ですか? チベットというと、ダライ・ラマを頂点とするチベット仏教をイメージする人が多いと思いますが、ボン教はそれよりさらに古い宗教で、中央アジアに起源をもつそうです。このボン教、寺院の建築や僧侶の衣など、見た目はチベット仏教にそっくり。しかし仏教徒とは逆に、聖地や寺院の周辺を反時計回りに回ったり、マニ車を反時計回りに回したりします。そしてダライ・ラマに対して、人々は強い関心を持っているわけでもなさそうです。チベット仏教とは似て非なる、なんとも不思議な宗教なのです。

仏教寺院にそっくり!インドのボン教総本山へ 仏教寺院にそっくり!インドのボン教総本山へ

ボン教の総本山はチベットにはない

そんな興味深いボン教の総本山は、現在インドにあるそうです。北部ヒマーチャル・プラデーシュ州のドランジにあるメンリ僧院がそれ。もともとこの僧院は、チベットのツァン地方に1405年に創設されましたが、1960年代の文化大革命で破壊され、1967にインドで再建されたとのこと。世界遺産のカルカー・シムラ鉄道も通る、ソーランという駅から約18km。緑豊かな山が連なる、非常にのどかな場所に僧院はありました。標高は1500m程度でしょうか。この地域一帯にボン教徒の難民キャンプがあり、チベットから亡命してきた人々が暮らしているそうです。

仏教寺院と見分けがつかないメンリ僧院

メンリ僧院の建物群は、丘の上に固まるように建っていました。白壁の階段を上っていくと、ひときわ派手な本堂にたどり着きます。えんじ色をベースに水色や黄色、黒などで塗られた、ちょっとモダンで新しそうな建物です。知らずに訪れたら、きっと仏教寺院と勘違いしたことでしょう。ちょうど中で勤行が始まりました。えんじ色の僧服を着た大勢の僧侶が、小さな机を前に並んで座り、経を唱えています。中央に観音様のような金色の座像があります。飾りつけもなにもかも、チベット仏教のお寺にそっくり。きっと細かい違いはあるのでしょうが、しろうと目にはさっぱり分かりません。

インドのなかの異世界

本堂の周囲にも、モダンで立派なチベット風の建築が多くありました。図書館や子供の学校、外国人が宿泊できるゲストハウスなどもあり、田舎ながらもかなり充実していそうです。8年前にチベットから亡命してきた若いお坊さんと話をすると、「ボン教の勉強をするためにはこちらの方がいい」とのこと。チベット仏教徒の場合、一般人も含めて亡命者が目指すのはダライ・ラマが住むダラムサラですが、ボン教徒にとってはこの場所がよりどころなのでしょう。緑濃い山々の中、訪れる人も稀な田舎に突如現れたボン教徒の村。ドランジは、インドに数多くある「異世界」のひとつでした。