ポルトガルで最もポルトガルらしい村

旅をしていると、時々自分の想像を絶するものに出会うことがあります。ポルトガルの田舎を車で旅していた時に訪れた、岩山の上にへばりつくように家々が並ぶ小さな村モンサントMonsantoの風景が、まさに想像を絶するものでした。その村には岩山の上から落ちてきた丸い巨石がごろごろ転がっていて、その巨石の間に家々が造られていたのです。1938年に「ポルトガルで最もポルトガルらしい村」に選ばれたモンサントは、現在は政府認定の「ポルトガルの歴史的な村々Aldeias Historicas de Portugal」に認定されている、時代から取り残されてしまったかのような静かな美しい村です。

絶景!!ポルトガルで最もポルトガルらしい村「モンサント」は巨石の中にあった(前編) 絶景!!ポルトガルで最もポルトガルらしい村「モンサント」は巨石の中にあった(前編)

聖なる山につくられた小さな村

ポルトガルが世界一を占める特産品といえば、ワインの栓にも使われるコルク。そのコルクの木が茂る平原をスペインとの国境を目指して東に進むと、突然岩山が現れます。ポルトガルで最も標高の高いエストレーラ山脈の東に位置するこの岩山は、標高758m。ごろごろと岩に覆われたその特異な姿から、聖なる山として人々に崇められていました。山頂にはテンプル騎士団の城塞の址が残り、城のふもとにモンサントの村が広がります。小一時間も歩けば村全体を歩きつくせるような小さな村は、巨石と石造りの家々のコラボレーション。まるで野外ミュージアムのようです。

巨石と家のアートが並ぶ野外ミュージアム

それにしても、よくもまあこんな巨石の間に家を建てようと思ったものです。ゴツゴツとした岩ではない、つるっとして丸みを帯びた巨石の一部を壁に利用したり、ふたつの巨石の間の狭いすき間に家を建てたり。巨石が動かないように、つっかえ棒が渡してあるのがちょっと不安を煽ります(笑)。小路の階段も石を利用してあり、苔むした巨石が完全に家並みに組み込まれています。村が丸ごと巨石のアートだといってもいいでしょう。村の家々の上には今にも転げ落ちてきそうな巨石が岩肌にしがみついていて、地震の国で育った日本人にはちょっと恐しい眺めです。

大いに賑わう「十字架祭」

ポルトガルの秘境ともいえるこの村は、他の田舎の村同様どんどん人口が減ってお年寄りばかりが残り、今では村の人口は1000人を切ってしまいました。しかし、毎年5月3日に行われる「十字架祭」には沢山の観光客がこの村に集まり、大いに賑わいます。昔、イスラム教徒との戦いのさなかに籠城していた村人たちが、まだまだ食糧があると敵に見せるために胃袋が満タンの牛を投げ捨て、それを見た敵がまんまと騙されて、食糧がこれほどあるなら戦いも長引きそうだと諦めて包囲を解きました。その日を記念して、お祭りでは村の女性が牛の代わりに花を城壁から投げるようになったのです。(続く)