スピリチュアルな国アイルランド

アイルランドは、合理主義的キリスト教精神が重んじられるヨーロッパにおいて、ちょっと異質な国と言えるかもしれません。もちろん、この国もキリスト教を信仰する敬虔な国ではあるのですが。さまざまな妖精たちの存在が今でも信じられ、道に「妖精の横断に注意」の標識があることは、司馬遼太郎も『街道をゆく』の中に著しています。古代の巨石文明や、太陽を重要視するキリスト教以前のケルトの信仰と神話など、スピリチュアルな空気が漂う国アイルランドの北部には、伝説の巨人が造ったという「石の道」があります。

伝説の巨人が造ったという、六角形の石柱が並ぶ奇景「ジャイアンツ・コーズウェー」 伝説の巨人が造ったという、六角形の石柱が並ぶ奇景「ジャイアンツ・コーズウェー」

アイルランドの秘境にある、巨人が造った「石の道」

アイルランド北部のアルスター地方は、ヨーロッパの中で辺境感の漂うアイルランドの、さらに秘境といってもいいかもしれません。今でもゲール語が話され、妖精が棲む地といわれ、そして手つかずの大自然が残っています。このアルスター地方で一番の見どころが、伝説の巨人フィン・マックールが造ったといわれる海岸「ジャイアンツ・コーズウェー」です。1986年に、世界自然遺産(といっても、ここは北アイルランドに位置するので、現在の国としてはアイルランドではなくイギリスに属しますが)に登録されています。

正確な六角形の石柱が海岸に並ぶ奇景

ジャイアンツ・コーズウェーは、アイルランド島の北にある、なんとも不思議な景観の海岸です。美しく揃った4万本の六角形の石柱が、延々と8kmにわたって並んでいるのです。この石柱群は、火山から噴出した溶岩が、6000万年という気が遠くなるような時間をかけて、冷却と収縮を繰り返したことによって造り出されました。人々が歩くところは平らに磨耗して、まるで六角形の石を敷いた石畳のようになっています。また、地上に長く伸びた石柱群は、その形によって「巨人のオルガン」「巨人のブーツ」「巨人のこぶ」など巨人に因んだ名前がつけられています。

自然が造り上げた芸術に宿る力

それにしても、こんなに正確に整った六角形が、自然の力によって造られたことには、驚きを禁じえません。この六角形の石柱群というのは世界各地に存在しますが、その規模の大きさと造形の美しさで、ジャイアンツ・コーズウェーは群を抜いています。また、ここの素晴らしい点は、自分の足で石の上を歩けることでしょう。自然が造り出した芸術作品を、実際に歩いたり触れたりしながら体感することができるのです。また、ここはアイルランドのパワースポットといわれる場所でもあります。巨人が造った石の道には、不思議な力が宿っているかもしれませんね。