カスバ街道で最も美しいカスバへ

カスバ街道に点在するカスバの中で、最も有名で最も美しいのは、世界遺産にも登録されている「アイト・ベン・ハッドゥ」でしょう。『アラビアのロレンス』や『ナイルの宝石』『グラディエーター』『ハムナプトラ2』といった数々の映画のロケ地として知られています。ワルザザードから行くには、地元を走る乗り合いタクシーをチャーターするのが一番確実です。料金は交渉制ですが、私が行ったときはどのタクシーも同じ料金で、それ以上下がりませんでした。マラケシュとワルザザードを結ぶ街道沿いにあるので、ここで下車して、カスバの手前の新しい村に滞在してもいいかもしれません。部屋からカスバが見えるホテルもあります。

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目に飛び込んでくるカスバの威容

手前の村でタクシーを降りて、村の奥に歩いていきます。突然視界が開け、広い河原の対岸にアイト・ベン・ハッドゥのカスバが現れました。このカスバの魅力は、小さな山の斜面に築かれたカスバの全景の美しさだと思います。背後には、遠くアトラス山脈が聳え、手前の川沿いに木々が茂り、なんとも絵になる光景です。いつまで見ていても飽きない惚れ惚れする姿ですが、川を渡っていよいよカスバの中に入るとしましょう。アイト・ベン・ハッドゥは、最盛期には300人が住んでいたといわれていますが、今では数家族が住むのみ。敵の侵入を防ぐため、集落への入口はひとつしかありません。

難攻不落の堅固な要塞の中を歩く

カスバの中は、要塞というだけあって路地が入り組んでいて、まるで迷路のよう。建物の1階には窓がなく、換気口のみが開けられていました。各家々には高い壁の見張り台兼穀物倉庫がしつらえてあります。今では路地のあちこちに土産物屋があり、ベルベル人が描いた絵や織物、雑貨などが売られています。それらを冷やかしながら集落の最も高いところまで上っていくと、そこには篭城に備えての食料庫がありました。ここからは360度の絶景が見られ、遠くアトラス山脈も望めます。周囲に何もない、荒涼とした風景を見ていたら、ふと「カスバの女」の「♪ここ〜は地の果て ア〜ルジェ〜リア〜」が頭の中で流れました。

アルジェリアであの歌を歌いたい

子供のころに聞いた、遠い歌の世界の異境に、やがて自分の足で立つことになるのですから、旅というのは面白いものだと思いませんか?「カスバの女」は「ここは地の果て アルジェリア」と歌っているので、本当の舞台はアルジェリアのカスバのようです。首都アルジェのカスバは、こちらも世界遺産に登録されています。フランス軍がアルジェに侵攻した後、フランス風に改造されていった白壁のカスバは、モロッコのそれとはまた異なった表情を見せてくれるでしょう。いつかアルジェリアを訪れて、カスバの中で「カスバの女」を歌うのが、今の私の夢のひとつです。