雑誌に載っていた一枚の写真が忘れられない

「雑誌『芸術新潮』2004年8月号の巻頭特集だった、カタルーニャ地方のロマネスクの教会に行ってみたい」。2014年の初夏にバルセロナを訪れた友人が言いました。「雪を頂いたピレネー山脈を背景に、黄色い花が咲く丘の上にぽつんと石造りの教会が建っている、表紙の写真が忘れられなくて」と。スペインのカタルーニャ州は、ロマネスク様式の教会の宝庫といえます。その中でも、秘境と呼ぶにふさわしい、ピレネー山脈の麓「ボイ渓谷」の村々に、世界遺産にも登録されている珠玉の教会が点在しています。

ピレネー山脈の麓、人里離れたボイ谷にひっそりと佇む世界遺産のロマネスク教会(その1) ピレネー山脈の麓、人里離れたボイ谷にひっそりと佇む世界遺産のロマネスク教会(その1)

ロマネスク様式の建築とは?

ロマネスク建築は、ゴシック建築の前の時代のものです。スペインでは11〜13世紀にかけて、ロマネスク様式の修道院や教会が各地に建てられました。ゴシック様式の大聖堂は巨大で天井が高く、内部は広々と開放的。大きな窓には華やかなステンドガラスがはめ込まれ、そして外観はいくつもの繊細な尖塔が天上に届かんとばかり、空に向かって伸びています。それに比べると、ロマネスクの教会は狭く、天井が低く、外側に尖塔のような装飾のない、丸っこいイメージの地味で素朴な外観です。大きな窓をはめ込むことができなかったので、光が差し込まない内部は随分と暗かったことでしょう。

ロマネスクの神髄は壁画と彫刻にあり

実は私も、ロマネスク建築・美術が大好きです。ステンドガラスがなかった時代、ロマネスクの教会の内部の壁には、見事な壁画が描かれていました。それはいわゆる「絵で伝える聖書」というべきもので、聖書を読めない人々のために、キリストの生涯や聖人の伝説などが壁一面に描かれていました。この壁画が、なんというか「ヘタウマ」なのです。ちょっと不恰好で、コミカルで、まるで子供が描いたような、思わず笑ってしまうようなマンガチックな絵。それは壁画にとどまらず、教会の入り口に施された彫刻や、修道院の回廊の柱に刻まれた彫刻も同じです。この壁画や彫刻が、たまらなく魅力的なのです。

ボイ谷の教会巡りはレンタカーで

ボイ谷は、ピレネー山脈の南麓、バルセロナの北西に位置し、バルセロナからは車で約4時間ほどかかります。南北に開けた谷に沿って村が点在しており、7つの村の9つのロマネスクの教会が世界遺産に登録されています。教会巡りをするなら、レンタカーを利用するか、バルセロナからPont de Suertの町までバスで向かい、ここでタクシーを手配することになるでしょう。私は、友人とともにレンタカーでボイ谷に向かい、世界遺産の教会のひとつがあるエリル・ラ・バル村に一泊することにしました。(その2に続く)