重厚なバロック建築が並ぶザクセンの都

チェコとの国境に近いドイツのドレスデンは、かつてのザクセン王国の首都で、18世紀初頭に大きく発展しました。この街をひとことで表すなら、まさに「重厚」という言葉がふさわしいでしょう。街の旧市街には、王国の栄華を今に伝えるバロック建築がずらりと立ち並んでいます。スペインのバロック建築といえば、‘スペインで最も美しいマヨール広場’と称されるサラマンカのマヨール広場が有名ですが、繊細で端正で非常に華やかな印象があります。バロック建築が多いオーストリアの首都ウィーンも、やはり華やかで煌びやかで女性的な街です。これらに対して、ドレスデンの建物はみな外壁が黒ずんでいて、同じバロック様式でもずっしりと重々しく、非常に男性的な力強さを感じます。

瓦礫の山から復興したドレスデンの重厚なバロック建築群は一見の価値あり 瓦礫の山から復興したドレスデンの重厚なバロック建築群は一見の価値あり

瓦礫の山と化した街を見事に復興させた市民

まるで中世の建物がそっくり残っているかのような、歴史を感じるドレスデンの街並みですが、実はドレスデンは、第二次世界大戦末期、1945年の連合軍による大空襲で壊滅的な被害を受けているのです。「エルベ河畔のフィレンツェ」と謳われた、ドイツ最高のバロック様式の歴史的建造物の多くが瓦礫の山と化してしまいましたが、大戦後、ドレスデンの市民たちは、爆撃前の資料などを参考に、街並みを見事に再現し復興させました。空襲によって破壊された、黒く煤けた瓦礫をできるだけ使って再建したため、建物の外壁が黒ずんでいるのですね。それにしても、同じく大戦によって廃墟と化した旧市街を完全に元通りに復元したポーランドのワルシャワといい、ドレスデンといい、市民の街を愛する気持ちと復興の精神には頭が下がります。

「ヨーロッパ最大のジグソーパズル」

ドレスデンの戦災の象徴とされるのが「聖母教会」です。空襲によって瓦礫と化したまま放置されていましたが、1989年に東西ドイツが再統一すると再建の運動が高まり、世界的な一大プロジェクトとなりました。聖母教会の再建は、瓦礫から掘り出したオリジナルのパーツが可能な限り元の位置に組み込まれ、その作業は「ヨーロッパ最大のジグソーパズル」と評されました。教会は2005年に完成し、今では優雅な白亜の姿を見ることができます。教会の塔の上からの眺めもおすすめです。

奇跡的に残ったマイセンの壁

ほとんどが破壊されたドレスデンの旧市街で、戦災を奇跡的に免れた場所があります。それは、シュタールホーフというヨーロッパ最古の武芸競技場の外壁の、「君主の行列」というマイセン磁器のタイルに描かれた壮大な壁絵です。12世紀から20世紀までのザクセンの王のと、時代を彩った文化人らが描かれています。長さ約100m、使用されたタイルは2万5千枚。淡い黄色と黒だけでで描かれた壁画を見るなら朝がおすすめです。まだ人通りが少ない朝、静かな通りで朝日を浴びて輝く壁画をじっくりと見ることができます。破壊と再生を経たドレスデンのバロックの街を、歴史に思いを馳せながら歩いてみてください。