カタルーニャが誇るロマネスク美術を収蔵

11世紀から13世紀にかけて、スペインのカタルーニャのピレネーの麓の谷に花開いたロマネスク建築の教会たち。その中でも、ピレネーの南麓、ボイ谷にある9つの教会は世界遺産に登録されています。かつて、教会の中の壁は素晴らしい壁画で埋められていました。こんなピレネーの山懐の鄙びた村で、どのようにしてこのように素朴ながら美しい教会と素晴らしい壁画が制作されたのかと、ボイ谷を訪れたなら感嘆せずにはいられません。しかし、今、私たちが教会の中で見ている壁画は、残念ながらレプリカです。オリジナルの壁画と、彫刻、祭壇などの収蔵品は、バルセロナのモンジュイックの丘にある「国立カタルーニャ美術館」に収められています。

ボイ渓谷のロマネスク教会群の至宝と壁画はここに!バルセロナのカタルーニャ美術館 ボイ渓谷のロマネスク教会群の至宝と壁画はここに!バルセロナのカタルーニャ美術館

賛否両論だった教会の壁画の修復と移築

長い間、人里離れた山奥の村に打ち捨てられ、手入れもされていなかったロマネスクの教会と壁画は、損傷と盗難の危機に瀕していました。この「ロマネスクの至宝を守るため、素晴らしい芸術作品を後世に残すため」に、20世紀のはじめに、傷んだ壁画を壁ごと剥がし、バルセロナに運んで丁寧に修復したのち、カタルーニャ美術館に展示したというわけです。しかし一方では、「本来あるべきところから壁画を引き剥がしてきた」という批判の声もあったそうです。

忠実に復元された教会内部

美術館のロマネスク部門は、室内は照明が落とされていますが、フラッシュなしでの撮影が可能です。各教会ごとに、堂内の構成が忠実に再現され、正面の主祭壇の奥の丸く窪んだところもその通りに造られています。壁画や祭壇は実際にあったのと同じ位置に復元されています。中でも圧倒的な迫力で私たちに迫ってくるのが、ボイ谷のタウル村にあるサン・クレメンテ教会の壁画「全能のキリスト」です。これらの壁画を村の教会に残したまま、うまく修復できなかったのかなあ、と、ちょっと残念な気にもなりますが、これだけのロマネスクの至宝をバルセロナで一度にまとめて見られるのは、ロマネスク美術が好きな人にはたまらないでしょう。

見てから行くか、行ってから見るか

デフォルメされた、ユーモアたっぷりのヘタウマのようなロマネスクの絵や彫刻は、見れば見るほど味わいがあります。ここでまず予習をしてからボイ谷の教会に行くか、それとも教会を訪れた後にここで本物の壁画を見るか。私はいつも、ボイ谷に行ってからカタルーニャ美術館に行きます。実際の教会の建物や、村、そしてピレネーの風景の残像が頭に残っているうちに、『あの教会の中はこんなふうになっていたんだなあ』という実感を持ってオリジナルの壁画を見ると、まるで教会の中に戻ったような気分になるのです。カタルーニャ美術館は毎週土曜日の午後3時から無料になります。ロマネスクの至宝たち、必見です。