南米でも珍しい展示がある博物館

標高1200mのアルゼンチン北部の町サルタは、チリ、ボリビア、パラグアイの国境に近い場所にあります。南米の町には様々な博物館が数多くありますが、そこでは陳列されたものを見るだけなので、私は見物疲れをしてしまいます。しかしこのサルタの高山考古学博物館には、非常に関心がありました。そこには目を疑うような展示物があるのです。それは「子供のミイラ」です。研究により、この子供たちは生贄にされ、幼いまま土中に埋められたことが明らかになっています。

アルゼンチンのサルタに眠る生贄にされた子供のミイラ。死亡後も何かを語る幼い姿 アルゼンチンのサルタに眠る生贄にされた子供のミイラ。死亡後も何かを語る幼い姿

展示室には幼さが残るミイラが

この博物館には子供のミイラが3体あり、そのうちの1体のみが6〜8か月ごとに替えられて展示されているそうです。私が訪れたときは、推定7歳という男の子のミイラが展示されていました。ミイラになった男の子は膝を抱え、顔は伏せていたので表情は見えませんが、衣服の隙間から見えた指は丸みを帯び、柔らかそうな髪の毛はまだ生きているようでした。展示室には、ここで保管されている全ての子供のミイラの写真と推定年齢、および服装などをパネルで紹介していました。残り2体は推定年齢が6歳の女の子と14歳の女の子でした。

極寒の気候がこの子供たちをミイラにした

この3体のミイラは、1999年に標高6739mのユヤイヤコ山の頂上付近で発見されました。館内で上映されている映像から発見当時の状況を知ることができます。酸素マスクをつけた調査隊が山の峰を歩き、山頂付近の小屋の下から、ミイラになった子供たちを発見しました。このミイラを医学的に解析したところ、約500年前に死亡したことがわかったそうです。雪や氷に覆われる極寒の山頂に埋められたため、子供たちの肉体は腐らず、皮膚や肉が残った半ミイラになったのです。このミイラを保存するため、館内のミイラ展示台の中はマイナス20度に設定されています。

子供たちは何を伝えられ、何を今に伝えるのか

自然に神が宿ると信じ、怖れ、崇め、敬うインカ文明の時代、人々が子供を生贄にしなければならないほど、天変地異があったのでしょうか。このミイラの存在から少しずつその謎が解明されている今日です。また、500年以上の時を経て、このミイラたちが私たちに何かを伝えようとしているのかもしれません。博物館では全員のミイラに一度に会えませんが、この幼い姿から何かを感じ取ってみることができるでしょう。