天才が彫った「ピエタ像」を見るなら、バチカンへ

ルネサンス期にはレオナルド・ダ・ヴィンチと並ぶ、もう一人の天才ミケランジェロ・ブオナローティがいました。彼もまたイタリアで活躍した芸術家で、フィレンツェやローマに作品を残しているので、美術館を訪れると目にする機会があると思います。中でも、彼の彫刻作品は人間の業とは思えないほど素晴らしいと、個人的に思います。神業とも思える彫刻「ピエタ像」を肉眼で見たいと、訪ねたのがバチカン市国でした。そこのサン・ピエトロ大聖堂に展示されたピエタ像を見たとき、震えるほど感動したのです。

イタリア・アートの旅。天才ミケランジェロの「ピエタ像」を訪ねてバチカンへ イタリア・アートの旅。天才ミケランジェロの「ピエタ像」を訪ねてバチカンへ

23歳の若さで、神の業とも思える完成度

サン・ピエトロ寺院を入り、回廊を少し進んだ右側に展示されていました。明るすぎない程度の照明を浴び、大理石の彫刻は佇んでいました。「ピエタ」とは、イタリア語で「哀れみ、慈悲」の意味で、十字架降下後にキリストの体をひざに抱いて嘆き悲しむ聖母マリアの姿を表現した芸術作品の主題です。ミケランジェロは生涯4つの「ピエタ像」を彫刻で作っていますが、残りの3つは未完成です。大理石の塊から2年の歳月で、23歳の若さにして、これほどの完成度の高い「ピエタ」を完成させたことに感嘆してしまいました。

若くて、美しい、悲しみの聖母マリア

このピエタ像を見た瞬間、心が震えるようでした。大げさではなく、本当にマリアの悲しみが私の胸を打ったようで、しばらくその場から動けませんでした。これが二次元の絵画作品でなく、三次元の彫刻作品だから、よりリアリティがあったのかもしれません。通常はピエタの聖母マリアは年配の女性で描かれましたが、彼は「年をとらないマリア」という独自の解釈で作り上げたのも興味深い点です。後の18世紀には、あまりに美し過ぎる、と正気を失った男が聖母マリアの指を折る事件がありました。現在は修復されていますが、そこまで鑑賞者を魅了してきたことが伺えるエピソードです。

さらに感動した、2度目の訪問

初めて見た際の感激が忘れられず、それから10年後に再度訪れたとき、最初以上に見入ってしまいました。同じものを見て、さらに感激するなんてことは、人生にそう何度もある経験ではないと思います。彫刻はガラスケースに入っているので、反射して写真は上手に撮れません。やはり、肉眼で見るのが一番です。彼の全作品の中で、唯一署名が入った作品でもあるので、それを探すのも面白いかもしれません。大聖堂自体も素晴らしく、足を踏み入れるとその規模に圧倒されてしまいますが、「ピエタ像」の彫刻も見逃さないようにしましょう。