美女と魔女とカラスの伝説が残る村へ

ハンガリーの北、スロバキアとの国境近くの山間に「ホッローケー」という小さな村があります。ホッローケーという名前はハンガリー語の“カラス(ホッロー)”と“石(ケー)”を組み合わせたもの。これは『昔々、この村の美女が誘拐されて隣国の城に幽閉されました。美女を助けるために乳母が悪魔と契約を結び、悪魔はカラスに城を襲わせて、くちばしでつついて城を崩させました。そして、崩れた石を積み上げて造ったのが今のホッローケー城なのです』という伝説に由来します。今でも村の紋章には石を持つカラスが描かれ、また村の入り口には石の上に立つカラスの像があり、訪れる者を迎えてくれます。

世界遺産の村は貸し切り状態!! 冬のホッローケーに泊まってみる(前編) 世界遺産の村は貸し切り状態!! 冬のホッローケーに泊まってみる(前編)

ハンガリー版白川郷!?

ホッローケー村の住人たちはパローツ人と呼ばれ、モンゴル帝国が西へ西へと領土を拡大していた時代にカスピ海沿岸部から逃れてきた、遊牧民族クマン人の流れを汲むといわれています。小さな集落には、白壁とオレンジ色の屋根の、かわいらしい伝統的な古民家が軒を連ね、そこでいまだに生活を営む人たちがいます。なんだか日本の世界遺産、白川郷や五箇山と似ていますね。2015年の冬、私はこの「ハンガリーで最も美しい村」といわれるホッローケーの集落を訪れ、伝統家屋に一泊しました。

観光案内所のとっても親切な青年

宿の予約は、ホテル予約サイトを利用しました。バスを降りて、住所を頼りに集落の道を歩いていくと、一軒の家から青年が出てきて近づいてきます。実はその建物は観光案内所で、青年は案内所のスタッフでした。まず案内所に立ち寄って、翌日行こうと思っていたエゲルという町までの移動手段を調べてもらい、それから私たちが泊まる宿まで案内してもらいました。宿にはオーナーがいるわけではなく、この青年がチェックインから室内の説明、食事のアドバイスまですべて面倒を見てくれました。きっと、村にバスが着くたびに、二人組の観光客が大きなカバンを提げてやってくるのを、案内所の窓から見ながら待っていてくれたのでしょう。

一軒のかわいらしい古民家にステイ

宿はホテルや民宿ではなく、パローツ様式の一軒家をまるまる借りるコテージスタイルでした。手前に小さなキッチンがあり、食器も一揃い揃っています。奥のベッドルームには古い家具が置かれ、アンティークの生活雑貨や刺繍を施した布が飾られていました。きっとどれもこの家の持ち主が昔から使ってきたものなのでしょう。なんだかタイムスリップして、遠い昔の時代に遡ったような気分になりました。トイレとシャワーも整っていて、暖房はフル稼働で暖かく、古民家でも設備はしっかりしていました。さあ、では村の散策に出かけましょうか。(後編に続く)