アルフォンス・ミュシャが描きたかったもの

チェコの有名な画家といえば、なんといってもアルフォンス・ミュシャでしょう。「ミュシャ」というのは、フランス読みでチェコでは「ムハ」といいます。フランスで女優サラ・ベルナールのポスターを描いて、一躍時の人となった人なので、ミュシャというほうが分かりやすいのですが、チェコの人々は愛情と尊敬をこめてムハと呼びます。ムハは故郷を愛した人で、プラハの市民会館の市長の間はまるごとムハの作品ですし、プラハ城内の聖ヴィート教会にはムハのステンドグラスがあります。地元のために尽くした人でもあるのですね。

チェコのアートの巨匠ミュシャが滞在した城 チェコのアートの巨匠ミュシャが滞在した城

虐げられた歴史を持つスラブ民族のために……

ムハの作品というと、パステルカラーで彩られた綺麗な女優のポスターのイメージがあります。ですが、彼が本当に描きたかったものは、違ったようです。晩年、ムハは「スラブ叙事詩」という超大作に挑みます。テーマは、スラブ民族です。チェコ人もスラブ民族ですが、昔からスラブ民族は他の民族から侵略行為を受け、虐げられたという歴史があります。そのスラブ民族の誇りのためにと絵筆をとったようです。その作業をしたのが、プラハから車で1時間ほどいったところにあるズビロフ城です。

城内には、ムハのフレスコ画も残されています

ズビロフ城は、ガイドツアー形式で見学できます。ムハは、この城から見える景色を写真にとり、それを参考にしながら「スラブ叙事詩」を仕上げていったそうです。また、城内にはムハが描いたフレスコ画も残っています。壁を取り外すことはできませんので、ここに行かないと見ることができない作品です。

城の一角がホテルになっています

ズビロフ城の一角が、現在ホテルになっていますので、城に宿泊することもできます。ムハが滞在した部屋も残っています。宿泊者が多いときはいいのでしょうが、私は数組しかいないときに泊まったことがあります。古い肖像画がかけられている廊下などは、まるでタイムスリップしたかのようで、なにやら幽霊がでてきそうな雰囲気でした。お部屋自体はきれいで、バスルームも最新式で水回りもいいので、不自由はありません。

スラブ叙事詩が日本にくるそうです

在日チェコ大使館で伺った話ですが、近いうちに「スラブ叙事詩」を日本で展示するということで、準備がなされているそうです。巨大な作品群ですので、移動だけでも大変だと思いますが、今から楽しみですね。