展示室は必見、しかも入場無料です

前編からの続きです。九龍塞城公園は、1996年に新しく造られた公園ですが、管理事務所のある「衙門(がもん)」という建築物は、園内唯一の歴史的建築物です。これは九龍城砦が取り壊されるまでは、老人ホームでした。左右対称が美しい、清時代の様式の建物です。ここには、香港と九龍城砦の歩みを示す写真や地図などがあります。門をくぐって6つのブースに区切られた展示室は必見です。見学者が中に入ると、パッと電気がついて、壁に映像が映し出され、登場人物が当時の様子を語り始めるのです(広東語ですが)。「モグリ」の歯医者や、ゴミだらけの屋上で遊ぶ子供たち、不衛生の極みの通路などが次々と映し出されます。

南門の土台部分は、胸に迫る遺構です 南門の土台部分は、胸に迫る遺構です

魔窟の地に立って魔窟を追体験する!

それらの映像には、とにかく感嘆するしかありません。九龍城砦のカオスぶりを知識としては知っていて、本やネットで写真を見ていても、やはり壁に映して等身大のスケールで人間や居住空間を体験するという迫力には、遠く及びません。そして、「今自分が立っているこの場所こそが、まさにその魔窟の跡地なのだ」という実感が、じわじわと湧いてくるのです。展示はほんの少しですが、とても貴重な体験だと思います。頭上を啓徳空港発着の飛行機がすれすれに飛び交っていたという轟音や、ライフラインもメチャクチャだったという当時の臭気さえ、本当に体に感じられるようでした。

屋外展示も探してみてください

この他、屋外展示として、九龍城砦のジオラマと、1994年に発掘された南門の土台部分もあります。ジオラマを俯瞰し、その背後に描かれたジオラマ断面図のボードを見つめていると、頭がくらくらしてきます。こんな環境のところにも人は住めるのだ……という感慨が押し寄せます。なにしろ当時は世界一の人口密度を誇っていたのです。畳1畳に人間が3人という計算だとか。もうわけがわかりませんよね。そして、黒々とした南門の土台は、周りの整備された公園の風景とは明らかに異質で、背筋が寒くなるような感覚に襲われました。

歴史を垣間見る散策とグルメで、有意義な観光を!

このように、九龍塞城公園は、やはり魔窟の面影を今でもわずかながらにとどめているのです。昔、「魔窟」の響きに憧れを抱いていたかつての旅人の皆さん、往時の香港を知らない若い皆さん、一度は行ってみる価値はありますよ。もう一つ、九龍城は、グルメの町でもあります。タイやインドネシアなど東南アジアの住人も多く、ムスリムも多く住んでいる町なので、各国の料理が食べられます。私のおすすめは、ムスリム用レストラン「清真牛肉館」。どれを頼むか迷ってしまうおいしさで、ムスリムでなくても入れます(アルコールはありません)。公園をゆっくりと散策し、食べ歩きを楽しむというセットはいかがですか。