鉄道にも世界遺産がある

人類が共有すべき、普遍的価値をもつものを登録した世界遺産リスト。一般的に遺跡や街並み、手付かずの自然などが該当するように思われますが、鉄道にもいくつか世界遺産となっているものが存在します。オーストリアのセメリング鉄道や、スイスのレーティッシュ鉄道の主要路線、そしてインドの山岳鉄道群などがそれ。そのうちインドの山岳鉄道は、インドの異なる場所に敷設された3つの鉄道から成るものです。最初に登録されたのが北東インドのダージリン・ヒマラヤ鉄道で、2005年に南インドのニルギリ山岳鉄道が拡大登録されました。そして2008年に再度拡大登録されたのが、カルカー・シムラー鉄道です。

世界遺産の山岳鉄道、カルカー・シムラー鉄道に乗る 世界遺産の山岳鉄道、カルカー・シムラー鉄道に乗る

おもちゃのようなトイトレイン

カルカー・シムラー鉄道は、インド北西部のヒマーチャル・プラデーシュ州の都市シムラーと、ハリヤーナー州の町カルカーを結ぶ総延長96kmの路線です。シムラーは現在インド人に人気の避暑地ですが、かつてのイギリス領インド帝国時代、夏の首都が置かれていた場所。カルカー・シムラー鉄道は1903年、当時の夏の首都への交通の便をよくするために敷設された鉄道なのです。山道を行くため軌道幅は狭く、レールの幅は標準軌の半分近い762mm。インドではこのような小さな列車のことを「トイトレイン」と呼んでいます。

山中を走る列車に乗ってみる

この列車にシムラーから乗車してみました。シムラー駅は白と水色で統一されたかわいい駅舎。すでに列車は待機しており、2等客車はいっぱいでした。まだちらほら空席のあるCCクラスの車両に乗り込むと、やがて列車は走り始めました。車内は確かに狭いですが、2人がけの席が2列ずつきちんと配されています。季節は夏。非常に緑濃い山の中を、列車はゆっくりと進んでいきます。標高2076mのシムラーから656mのカルカーまで、山道をうねりつつ下っていくのです。木々の向こうに広がる山並みを眺めていると、ここがつくづく山深い地であることを感じます。途中駅では、待ち合わせのために10分ほど停車することがあります。この路線は単線のため、反対方向から来る列車を駅で待つのです。

乗車の際に気をつけるべきことは

カルカー・シムラー鉄道の見どころは、橋と鉄道。途中に数多くのトンネルや橋が設けられていて、その数はなんとトンネル103ヵ所、橋が864ヵ所。とはいえ、景色は慣れてしまうと比較的単調です。しかも山の中腹を走るため、片側の景色がよくて、反対側からは何も見えない、ということも多々あります。なお、日に数便運行しているカルカー・シムラー鉄道は事前に座席予約もできますし、窓口で当日券を買うことも可能。ただし当日券は2等車両となります。車掌さんに差額を払って座席のグレードアップが可能ですが、途中駅では車掌さんを見つけるのが難しいので要注意。こうしてシムラーから約5時間半で、終点のカルカーに到着。ここからはデリーに向かう特急列車も出ているので、首都から比較的訪れやすい場所。鉄道好き、世界遺産好きには見逃せない場所と言えます。